第12話 冷たい態度が心に刺さります
「本当に、顔を出されるのですか?」
「当たり前でしょう、ここまで来たんだから」
心配そうなトールと共に、公演が終わった後、アリオの顔を見に行った。
もちろんお土産も持参で
向かった建物の奥にある一室。控室の扉をノックすると、さっそく本人が顔を出した。
ここに来る前に一応演奏も聞いたが、すごく良かった。
ホールに響くのは、巧みな技術が編み出す一糸乱れぬ音のハーモニー。
長い時間の練習の積み重ねを窺わせる演奏は、前に聞いた時よりもぐんと良くなっていたのが分かった。
演奏終了後のたくさんの観客の拍手を思い出して、少しだけ誇らしい気持ちになる。
だが、
「来たの? お嬢」
部屋の扉が開けられてすぐ。
そっけない出迎えの言葉を向けた幼なじみを前に、私は言葉が続かなかった。
幼なじみから向けられる警戒の表情を見ると、胸が苦しくなってたまらない。
だが、ここで黙り込んでいたままでは何の為にここまで来たのか分からない。
一呼吸して気持ちを落ち着けた後、意を決して口を開く。
「えっと、その今日は謝りにきたの」
「謝る? 獣人なんかの俺に? 襲われて怖い思いするかもしれない俺なんかに?」
彼からの言葉がグサリと突き刺さる。
心の底からそう思っているような表情で「何で?」という顔をアリオに向けられた。
謝りに来る事すら想像されていなかったらしい。
「……」
私は思わずその場を後にしたくなった。
「お嬢様……」
だが、トールの気遣わしげな言葉で少しだけ勇気を取り戻す。
先日のあの一件で少しだけ態度が柔らかくなった彼は、こちらを案じるような顔をしていた。
きっとここで視線で助けを求めれば、彼なら応じてくれるだろう。
だが、甘えていてはいけない。
こんな所で躓いているわけにはいかないのだ。
まだ清算しなければならない罪が残っている。後が使えているのだ。
私はアリオに向かって頭を下げた。
「えっ!?」
呆気にとられるアリオの声が聞こえる。
表情は分からないが、きっと驚いているだろう。
「本当にごめんなさい。謝りたくて来たのは本当なの。私のせいでアリオに迷惑をかけてしまって、これくらいで許してもらえるとは思えないけど、出来る事があるなら協力するわ」
「お、お嬢……」
しばらく呆然としたような声を発していたでアリオだが、こちらが頭を上げないのを見て慌て始める。
「と、とにかく中に入ってよ。いつまでもこんな所にいたら目立つし」
「そうね。確かに他の人に見られたら、アリオに迷惑よね」
「あ、いや。そういう意味じゃないけど」
動揺するアリオだが、こちらを部屋へは入れてくれるようだった。
遠くから様子を見ていた他の楽団員たちが、お茶を用意してくれた。
彼等の視線からは訝しさが消えていないが、追い払われないだけマシだと思う事にした。




