第11話 幼馴染を訪ねようと思います
トールの次にフォローをしていくのは、アリオに決めた。
乙女ゲーム「ブラッディ・ラブ」の攻略対象の一人。
アリオ・フレイス。
獣人でもふもふした耳としっぽがある、私の幼馴染だ。
運が悪いという変わった体質をしているが、明るい性格で、そして人の良い平民の男性。
輝く様な金の髪に、燃える炎を灯した様な赤い瞳で、こちらと同じかやや高い身長をした人物だ。
彼は、結構名の知れている楽団「清龍楽団」に所属している。
普段のアリオは有名な楽団の一員として各地を公演して回っているのだが、ちょうど今頃は近くの町に滞在している期間だった。
身分差ゆえに両親に内緒だったんだが、アリオとは子供の頃によく屋敷の庭で一緒に遊んでいた。
なので、屋敷の場所も、ここまでの道も知っていておかしくはないだろう。
彼も、私を突き落とした犯人になりうるのだ。
子供の頃のアリオは、人懐こい笑みを浮かべながらと一緒に遊んでいた幼馴染だったというのに、どうして犯人候補になってしまったのか。
言わずもがなだが、私はトールのみならず彼からも恨まれている。
その原因は、とある出来事の濡れ衣をかぶせてしまった一因が私にあるという事。
以前、彼が前にこの近くの町に公演に来た時に、その公演をしたホールで殺人事件が起こった。
私はその時に、アリオが楽団員の中で唯一獣人である事を理由にあげて、彼を疑って行動してしまった。
そしてその際に彼と言い合いになってもみ合いになりささいな怪我を負ってしまったのだが、私はそれが彼の仕業であると他の人間に言いふらしてしまったのだ。
幸いにも彼にアリバイがあったおかげで濡れ衣は晴れ、殺人事件の犯人にされるなんて事は無かったのだが、そのせいでアリオについての悪い噂が町に広まってしまっていた。
当初は、アリオの所属する「清龍楽団」はまだ有名になって間もなくの頃で、売れ始めたばかりと言っても良い頃だった。
そこからいよいよ駆け上げろうという大事な時期だったのだ。
だというのに、私がした余計な事のせいで、彼等は予定したいくつもの公演を拒否されてしまい、悪評を背負う事になってしまったらしい。
ここまでやらかしておいて、恨まれてないと考えられる方がおかしいだろう。
濡れ衣を着せられた腹いせに崖から落とされてもおかしくはない。
それを確かめる為にも、彼とは一度会っておく必要があった。
最近は毎日のように町で講演があるので、行けば大抵出会えるだろうから、トールを連れてさっそく足を向けたのだ。
彼の楽団の演奏は最近聞いていなかったので、顔を出すついでに聞いてみるのも良いかもしれない。
当然お土産とかも一緒に持っていくつもりである。物を贈ればいいとかそういう風に考えているわけではないが、誠意を見せるにはできる事はすべてやった方が良い。
私が変わったのだと思ってもらえなかったら、また再び命を狙われる羽目になるのだから。




