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体の線がブレる
AIや人間の電子体がつよいストレスを感じたら起きる現象。ちなみにストレスにさらされ続けていると体の線が荒くなる。
「いまさら……」
一番の後ろの方で誰が叫ぶ。
そこに居たのは俺たちの先輩の池野さんだ。池野さんは俺たちよりずっと古株の電脳寺 前支部長と同期であんなひどい環境にいても常に後輩である俺たちやAIを気にかけていた優しいおじさんだ。
その池田さんが泣いていた。
「警察が、
いまさら!5年間も済馬のせいで、ここはもう……!」
池野さんが叫んでいるのを俺は初めて見たかもしれない。
「プログラマーや動けるAIが直せないくらいここはボロボロになってしまったんだ!
ああ、外見だけ見たら他の支部の空間と対して変わらないように見えるが、
電脳寺さんや津田江くんもここにいるなら見ただろう!空間を作っているコードや、それを作っている僕たち、プログラマーやAIもボロボロなんだ!」
ヒステリックに、電脳寺さんに向かって叫んだ。いつもの池田さんと違って目も血走って俺から見ても怖くて、隣にいたミュウも
電脳寺さんも、他のひとたちも怖かったようで体の線がブレていた。
池野さんはまた泣きながら、今度は叫ばないで、
「ゴメンよ、陽輔の娘さん。君は悪くないのはわかっている。でも五年前のことで、
信用できないんだ。
警察に裏切られたから。」
下を向きながら苦しそうに言った。
カタ、カタタタタン、カタン、ビービー
「ここもダメですか。」
さっきまで、椅子にいたはずの津田江くんは済馬がしゃべっていた壇上で何かコードをいじっていた。何してるの、津田江くん。
津田江くんはメガネをいつもかけているため表情が分からなかった。言ったら悪いけど、かなり不気味な感じの新人だった。
池野さんも何をしているのと思ったようで、
「津田江くんも警察なんだろう!何をしている。お前らを信用するつもりなんか」
津田江くんを睨みながらそう叫ぶ。
すると、ずっとコードを見ていた津田江くんは顔を上げて、池野さんの前に一瞬で滑るように移動した。それを見た池野さんや俺たちは驚いた。だって人間の電子体ができる動きじゃなかったから
「すいません。
私より先にあなたが喋り出したので、名乗るタイミングを逃していました。
私は警察ではありません。
世界電脳空間保安協会 日本本部所属DBAI
シュウセイ
と言います。」
そう言い終えると、
津田江くんの黒い髪が明るい水色に変わり、
長さも少し耳にかかるぐらいしかなかったのに肩にかかる長さになり、
メガネを外して俺が、いや俺たちが初めて見る彼の目は
虹彩の中にコードが薄っすら見える濃い青の
俺がよく見ていたAIたちと同じような物だ。
服装も俺たちが来ているプログラマーの制服から白を基調としたロングコートに変わった。
「日本本部所属DBAI……」
近くの第四とか第六の者じゃなくてなんで、本部の者が、そんな肩書きの者が来たということは、
第五は、もう関西区で解決することができない事態になっているのか。
「本部のDBAIがなんで、済馬のせいで、ここにいる通信を管理するAIは一人しかいなくてぼくたちは、本部に連絡を入れることができないのに、それになんで、人間のふりを。」
さすがの池野さんも戸惑っていた。
なんせ、5年間も来なかった本部の者だ。
本当に本部の者か疑ってしまう。
シュウセイさんはそういう雰囲気を感じ取ったのか俺たちに向かって言った。
「私は1年前に送られてきた匿名の電子メールの発信元がここだったので調べに来ました。そのメールは済馬の今までやってきた悪事が書いて、それを確かめるため4月から、ここに潜入しました。
人間のふりをしていたのは、済馬はAIのことを警戒していたからです。」




