3話
「おい、やつはどこ行った!」
「こっちにもいねーぞ!」
「探せ!まだこの辺りにいるはずだ!」
皆さんご機嫌いかがでしょうか。
私は一応元気です。
本日の天気は快晴。
そんな日に私は何をしているかというと...。
絶賛街中を逃亡中です☆
...完全に油断してました。
2時間前ーーー
「旅に出るならまずは道具を揃えないといけないわね。」
と呟きながら今の自分の格好を見る。
魔法使いらしいローブを着た、明らかに旅に出る格好ではない姿。
(うーん。服も買わないといけないかな。)
幾ら天才魔法使いだからといって一人旅をするのに、何も道具を持たないわけにはいかない。
野宿をすることもあるだろうから、せめて最低限必要な道具だけは買い揃えておかねば。
先にこの世界の主な国の名前と場所だけ明記しておこう。
この世界は大陸がいくつかあり、そのうちの一つの大陸に私たちの住む国がある。
その大陸は大まかに東西南北に4等分されて、それぞれの国が統治している。まず東がオルガント国。
西がファクスゴーン国。
南がディルベルス国で、北がセンナード国。
そして国々の中央はどこの国にも属さない土地がある。大昔そこには魔王城があったという言い伝えが残っており、どこの国も所有したがらなかったのだ。そこでこの地をどうするか国同士で話し合い、いわゆる緩衝地帯のような場所を作ったのだった。
実は言い伝えは正しくて後に魔王が復活し、魔王城が出現する場所がここだったりする。
この他にも国はあるが、それらの説明はまたの機会にしよう。
そしてまず私が行こうとしているのが南にある国のディルベルス国。
ディルベルス国は竜人達が住んでいる国だ。
この世界の竜人は見た目はただの人に見える。けれど所々鱗が生えており、私の出身のオルガント国の人々と比べると身体がかなり頑丈な人種だ。そして人によっては竜へ変化することもできる。
有名どころだと、今のディルベルス国の王族で王と王太子が竜化することが出来るそうだが、何故竜化出来る者と出来ない者がいるのかは今もはっきりとは分かっていない謎の多い種族だ。
ただ現時点で分かっていることは竜人達は穏やかな気質だが、一度でも竜化すると少し好戦的になるということと、もともと身体能力は高いがさらに高くなるということだけ。
...余談だが、竜人とは別に竜も存在する。
竜人と竜、お互い竜繋がりで仲が良いように思われがちだが、実際は良くはない。
竜のほとんどは姿を変えることが出来ないが、一部の高位の竜は人化出来る。だが彼ら高位の竜はわざわざ人の姿をとり、こちらと交流しようとなどはせずに人が訪れることのない僻地に住み続けている。
嘗て竜人はそんな人化出来る竜と人との間に生まれた子供だと言われていた。しかし互いの種族は交流をせず、さらには竜人に敵意を持つ竜も存在することでその説は否定されつつある。
そして竜は竜人と違いかなり好戦的な種族だ。
性格からしてもあまり相容れない。
...ここら辺はあまり深く設定していなかったため、作者であるはずの私ですらこの世界でどのようにして竜人が生まれたのかは分からない。
というか、作者の私が知らないことがあるにも関わらず、この世界が存在している時点ですでに私が書いた小説じゃないんじゃないかとも思うが...。
少しでもその可能性がある内にそれを否定するのは愚策。
すべては300年後に分かるし、そこら辺はもう深く考えないことにしよう。うん。
とりあえずそんなディルベルス国へ行ったら王都へは行かず、地方を巡って安住の地を探してみようと思っている。
隣国ということもあって私のことが知られている可能性があるからだ。
何はさておき、まずは買い物へ行こう。
指名手配されている可能性があるから変化の魔法をかけていく。
...自分でいうのも何だが私の容姿は割と目立つ。
膝裏に届くほど長いブロンドの髪に、瞳は紫で、前世でごく稀に見た綺麗な紫色をした夕焼け空のような不思議な色合い。
体はボッキュッボンと出るところは出ている、ないすばでぃだ。
前世ではこんなに胸がなかったので羨ましく思っていたが、あったらあったで邪魔なんだなと思った。(こんな言い方したら恨まれるだろうか...)
性別も変えてしまえば私だとは思われないだろうという事で、印象に残りにくそうな地味な見た目の男性にへんし〜ん。
よし、これならきっとバレないし目立たないだろう。
いざ街へ!
飛行魔法と姿隠しの魔法を駆使し、サフィラが逃げ込んだ森から一番近い街に到着。
この街はオルガント国の中でも物流が盛んで、品物が豊富だ。
ここなら入用なものがすべて揃うだろう。
食料、皮袋、簡易テント、ナイフ、鍋、皿、スプーンにフォーク、コップ、服と靴(どちらの性別でも違和感のない動き易いもの)、カバンを購入。
買ったものは全て空間魔法を使いしまっていく。
あとは魔法を使えば何とかなるからいいかなーと思いながら歩いていると、魔道具を売る店を見つけた。
少し気になり、ついつい店を覗いた瞬間、かけていた変化の魔法が解けてしまった。
「っ!?」
焦って周囲を確認すると近くにいた人々が驚いた様子でこちらを見ている。
(しまった、魔道具のこと忘れてた...!)
魔道具は安価なものもあるが、基本的には希少価値が高いものが多い。
そんな魔道具を売る店には防犯用として解呪系の魔道具が置いてある。
その解呪魔法のせいでかけていた変化の魔法が解けてしまったのだ。
(私のバカ!普段ならこの程度の魔法、防げるのに油断しすぎたわ!)
普段のサフィラならこの程度の魔法は簡単に防げるのだが、順調に買い物が進み油断した結界、解呪の魔法に引っかかる大失態をおかしたのだ。
「お、おい。あいつ今男だったよな?」
「ああ。確か男だったと思うぞ。」
「っていうかあいつ昨日指名手配されたサフィラ・ルグレじゃないか!?」
「ホントだ、手配書そっくりだ!」
次第にざわめき出す周囲。
(やばいやばいやばい!)
サフィラは急いで姿隠しの魔法を発動。
その場から逃げ出した。
「おい!消えたぞ!」
「姿隠しの魔法だ!おい、魔力感知出来るやついないか!?」
「探せ!捕まえれば大金貰えるぞ!!」
(いやぁぁぁ!)
叫びたいけど叫んだ瞬間居場所がバレる。
サフィラはとにかく心の中で叫んだ。
(せっかくここまで逃げきれていたのにー!私のバカバカー!)
運良く今この街には魔法使いがいなかったようで、無事に近くの森の中へ逃げ込んだ。
「お、追手はいなさそう...ね..。」
はぁーーと安堵の溜息をつく。
あんな風に人に追われたことがなかったサフィラは逃げ切ったと分かった瞬間腰を抜かした。