1話
ふと頭に浮かんだ話です。
楽しんで頂けたら幸いです。
只今私は絶賛絶望中。
理由?それは...----
ここは魔法の世界ルートムルグ。
この世界の住人達は皆個人差はあるものの魔法を使うことが出来る。
もちろん私も魔法が使える。それも1000年に一人生まれるかどうかというぐらいの大魔法使い。
世間では天才大魔法使いと褒めそやされていた。
私に出来ないことなんてなーい!と人生イージーモードを歩んでいたはずなのに、私の力に嫉妬した奴らに罠に嵌められ、国家反逆罪の罪で処刑されそうに...。
もちろん殺されてたまるかと命からがら逃げ出した。無事に逃げ切り、森に辿り着いたところでだんだんとムカついてきた私は、木に魔法を使って八つ当たりした。
そして、粉砕された木片が私の頭にクリーンヒット!
...おい誰だこいつ鈍臭いと思った奴!
私だって自分って鈍臭いと思ったけど他人に言われるのは嫌なのよー!
...こほん。
そして木片の当たりどころが悪かったらしく、私は気を失った。
気絶中、私はこの世界とはまったく違う地球という世界で生活していた記憶を見た。
地球という世界の日本に生まれた私はごくごく普通の一般市民だった。まあ若干オタクっぽいところもあったけど、そこら辺は気にしなーい。
そしてそんな私の最後の記憶は元日、1年の始まりの日で終わっていた。
30歳だった私は独身の一人暮らし。
大量のお酒を飲んで酔っ払い、いまだ独身だぜひゃっはーと自棄気味にはっちゃけながら実家から送られてきたお餅をやけ食いしていたところ、お餅を喉に詰まらせた。
嘘でしょ、こんな死に方したくない!と思いながらもがき苦しむも、だんだん意識が遠のき暗転、そこで目が覚めた。
地球での経験や知識、今の状況を鑑みるに、もしかしなくともこれは転生を果たしたということなんだろうけれども...。
あああぁあああぁぁ!
なにやってんの私!
何でお餅をやけ食いしたのよー...。
しかもこの転生先が中学生の時に自分で書いた小説の世界っぽい。
内容はたしか、自分を主人公にした異世界への召喚もの。
魔王復活の兆しが現れはじめ、魔王に対抗するため異世界から聖女(笑)を召喚し、勇者達と共に旅に出るとかいうよくある話。その召喚されるっていう聖女(笑)が私なんだけど、今思うとかなり痛い小説だった。しかも勇者と旅の途中でラブラブになって最後はハッピーエンド。若気の至りとはいえほんと痛すぎる!...黒歴史の小説の中に転生ってどんな嫌がらせだ。
さらにさらに、私が転生したのは脇役の大魔女と言われる人物。(聖女ポジの自分がいるのに何故他人に転生するんだ、謎すぎる...。)
勇者御一行が旅の途中で出会い、大魔女が持つとされる魔王城へ行くための手段を彼女から得るという重要だけど、脇役を出ない微妙なポジション。
その大魔女はかつて国から在らぬ疑いをかけられ処刑されそうになったが、上手く逃げ出し、300年ほど魔の森と言われる森に住んでいた。そんな自分を処刑しようとした国出身の勇者御一行に対して恨みを抱き、彼らを研究中の魔法の実験台として捕まえようとするけど、逆に勇者御一行に返り討ちにされるという。鈍臭っ。
と、ここまで思い出してみて自身の境遇と記憶にあるこの小説の設定を比べてみた。
まず国の名前。
小説に出てくる国の名前はオルガント。
そして住んでいたここの国もオルガント。
そして大魔法使いこと私の名前はサフィラ・ルグレ。
大魔女の名前もサフィラ・ルグレ。
ここまで一致していると気のせいとは言えない...。
聖女(笑)が召喚されるのは今から約300年後だとしても、共通点が多すぎる現時点でこの可能性を否定しては色々まずい。
という事で私は自分が書いた小説の世界に転生したと結論づけた。
...前世の自分に物申したい。
何でこんな話を書いた!
これじゃあ現世もろくな死に方しないじゃないかー!
うぅ、泣ける…。
とりあえず、私が絶望していた理由はお分かりいただけただろうか。
今の状況+黒歴史+転生先のスリーコンボが発生して絶望しない人がいたら教えて欲しい。
...私これからどうしよう。