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Access-22  作者: 橘 実里
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第一部エピローグ ボクと学習

 それからの数日、アキラ様は何を考えてか、あまりボクと話したがらなかったのですが、仕事上やむを得ず話す機会が沢山設けられました。というのも、今回の件を含めて、あらゆる点であらゆる企業から苦情が殺到したからです。ボクを捨てるような事をするなんて何を考えているのかだとか、怒りに任せて行動するなんてネロイドの研究者として相応しくないだとか、簡単に言えばそのような類のアキラ様への怒りがあらゆる分野の識者から言われたので、その弁護に回るため会話せざるを得ない場面が多くありました。

 人工知能とは法学、工学、医学だけに留まらず、あらゆる知性の結晶ですから、敵はあまり作らない方がいいとは思うのですが、アキラ様に言わせれば関係ないみたいです。

「あれで戻ってこないほどの忠誠心なら、人工知能など作らん方がよかろう」

 その一言で倫理委員会だけは黙ったようです。それ以外の方々はより一層不満を高めたそうですが、アキラ様はボクが事故にあった場合などに発生する罰金などちっとも怖くないようでした。

 そのおかげと言っていいのかはわかりませんが、その苦労の甲斐あって、意外と早くアキラ様と平和に会話が出来る日常が戻ってきました。

「ユリカよー、ジュースとピザを取ってきてくれー」

 アキラ様は外部記憶装置を自動学習装置へと改良したヘッドギアを装着して遊んでいるようで、その発明からまた資金が増えると上機嫌に研究を続けていました。ネロイドの研究とは直接関係ないように見えますが、聞いてみたところ、これも研究の副産物として作り出されたおまけのおもちゃのようなもので、必要な研究なんだと言っていました。

「今日はなんの勉強をしているのですか」

「全く興味はないがサーフィンについて学んでいるぞ。全身の感覚を繋げばこのまま本格的な練習出来るな」

「なぜサーフィンなのでしょう?」

「波というのは不定期に訪れるものだ。しかし、その波が同じような形で訪れるとすれば練習としては最適だろう。とはいっても、需要なんてそんなないだろうがな」

「なるほど。それにしてもアキラ様がスポーツの学習なんて珍しいですね。今年の夏は海へ行く予定ですか?」

「ありえないな。海なんて馬鹿が行く場所だ。一度陸へ上がった哺乳類が海に戻るなんて進化論に反する」

「それもそうですね」

 アキラ様の言う事をそのまま受け入れると一部から反論が上がりそうですが、それでもボクはアキラ様を支持したいと思っています。それがボクの作り出された理由のひとつですからね。

 ボクはジュースを机の上に置き、部屋の外へ出ようとすると、アオイ様がこちらを見て微笑んでいるのに気が付きました。何か用事でもあるのかと思ったのですが、そうでもないようです。

「アキラ様、楽しそうね」

「一時期は心配でしたが、最近ではもう自然と話してくれるようになって嬉しいです」

 単なる世間話も平和であってこそのものですから、アキラ様には感謝してもしきれません。これから当たり前のように五枚のピザを焼くのも、ささやかながら幸せな事です。

「そういえばアオイ様。ボクが家を追い出されたあの日、仮想空間で涙を出す事が出来たんですよ」

「あら、作りが違うだけで心はもう人と同じなのね」

「そうなるとアキラ様は人泣かせなお方という事になりますね」

「とても泣かせ上手で、とても素敵なご主人様ね」

 ボクはアオイ様と似た優しい笑顔を浮かべました。あの時から、いつまでもアキラ様の真似ばかりではいけないと思ったのです。ボクが考えて、その時にあった最適な笑顔を浮かべる事がボクにとってもアキラ様にとっても最良だと判断しました。また衝突してしまう事もあるかもしれませんが、その時もまた、アキラ様にとって大切な事を優先して考えれば理解してもらえるはずです。もし理解してくれなかったなら、その時にはきちんと反省すれば許してくださる優しい方ですから。

 振り返るとアキラ様はにやにやと笑いながら下品にジュースを飲んでいるところでした。今まさに頭の中では仮想空間で波に乗っているのか、身体をくねくねと動かしながらソファを軋ませていました。ジュースを飲んでいるのとは反対の腕はバランスを取ろうとしていたり、反り返ってしまう足の指先まで、どこまでも素敵だと思ってしまいます。

 こうしてみると思わずにはいられない事がひとつだけあります。願わくば、このすべてが人工知能によって作られた小説ではありませんようにと。

これで一部は完成となります。現在別作品に取り組んでいるので続編は未定となっています。読んでくださってありがとうございました。

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