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Access-22  作者: 橘 実里
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プロローグ ボクとアキラ様

 話によると人間は人間から産まれたのに人工知能とは呼ばないそうです。真っ白な仮想空間の中でそんな会話をしました。

 それ以外にも歩き方に不自然はないか、お茶を適切な量だけ注げるかなど、所作について確認を簡単に行う事もありますが、主には礼儀作法を正しく行い、相手に失礼がないかを調べています。あまりにも当たり前な事ばかり確認をするために、実は主人がボクを試していて、仮想空間に閉じ込めたまま会話をしたらどうなるのか実験していると勘違いするほどでした。

 また、ある日には四葉のクローバーが真っ白な地面に植え付けられていた事もあります。それだけかと思えば急に道路が現れ、塀が積み上げられ、一軒家が建ち並び、見上げれば低気圧の空が現れ、蜃気楼が立ち込めました。仮想の現実でボクが四葉のクローバーに対し、人間らしく反応を出来るのか見たかったのだと主人は言っています。四つ葉にはそれぞれの葉に別の意味が込められているそうで、希望誠実愛情幸運とありますが、幸運を強調して反応出来れば人間らしいそうです。

 ボクにはそれが人間らしさの問題ではなく、個性の問題でもあるのではないかなと思いましたが、それでも主人のそばに居られて幸せでした。不満などあったとしても、それを黙ったまま従う事に役目を感じ、より一層幸せだと思っています。感情に似たものがボクに備え付けられても主人の役に立たなければ意味がありません。なにしろ、与えられた課題に対してそれが正しいかどうかを判断する基準はボクではなく主人にあるのですから、何が起ころうとも疑う必然性がないのです。

 ボクの言う主人とはただ一人、アキラ様の事を意味しています。一度だけ眼球を通して見る事が許されたアキラ様は平均より背が高く、それなりにふくよかでいて、無造作に掻き毟られた頭は髪型と言えるようなものではありませんが、張り上げられた声や黒縁メガネの勇ましい姿は誇りに満ちていてとても魅力的です。毛髪に付着したフケのなんと羨ましい事で、あそこから世界を見渡せたらどれほど幸せな事か計り知れません。そのような願いはいつまでも叶いませんでしたが、二〇三〇年四月五日、ボクは人工知能が搭載されたネロイドとしてようやくアキラ様の側にいられる日がやってきました。

 そこは、物置のように機材が寄せ集められた三十畳ほどの作業場でした。

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