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お水探偵 秋山麗子の事件簿   作者: 夏目祐月
1/2

秋山麗子の事件簿

時刻は夜の12時を越えた。

1月1日新年だ。つけっぱなしのテレビではアナウンサーが新年挨拶をしている。

秋山麗子。私はバツイチ、子持ち、住んでる街で小さなスナックのママをしている。

スマホにはひっきりなしにお店の常連客からの新年の挨拶のメールやラインが届いている。その対応におわれるのが毎年元日の恒例行事だ。

いつもと同じ…ひと通り返答して寝ようとすると、またスマホがなった…ラインだ。お店で働いている女の子 鈴木奈々からだ。

時刻は深夜1時を回っている。新年の挨拶にしては少し遅いなぁと思いながら内容を見た。

「ママへ明けましておめでとう!今年も宜しくお願いします。新年早々だけど、ちょっと相談があります。今日会えませんか?」

改まって何だろう…ラインじゃダメなのかなぁ。そう思いながら昼に近くの喫茶店で待ち合わせの約束をして寝た。


朝8時、朝起きると息子が朝食を作ってた。

「おはよう!あれ?いつもより早いじゃん!」息子の名前は勇気。中学2年生。

私が夜の仕事をしているからか家事を手伝っているうちに何時しか家事が得意な男の子になってしまった。

「おはよう。何かお店の女の子から相談があるってラインがきて、気になってあまり眠れなかった。」麗子は勇気が淹れてくれたコーヒーをすする。

「お店の女の子?誰よ?」

「奈々ちゃん。半年くらい前にお店に来たばかりだから勇気は知らないと思う。」

「で?相談って何だったの?」朝食を運びながら勇気が聞いてきた。

「知らない。今日の昼に会う予定だから」

テレビでは新年の特番がやっている。すると緊急ニュースのテロップが鳴った。

「今朝早く浜松市中田島砂丘にて女性の遺体が発見されました。免許証から女性は浜松市在住の鈴木奈々さん(21歳)と思われます。尚、現場は静岡県警によって…」

「母さん…奈々って…もしかして…」勇気の問いかけに頭が真っ白になった私は何も言えなかった…。


家に勇気を残して、不安な気持ちで管轄の浜松中央警察署に車を飛ばした。

あのニュースを見てから何度も奈々ちゃんに電話したが出なかった。

「奈々ちゃん…お願い…」

警察の窓口で事情を話し待たされた。事件直後なのか建物内が慌ただしい。

しばらくして刑事さんらしき男性が数人の男性を連れて来た。

「静岡県警警部佐藤と申します。」白髪まじりでやや中年だが長身で整った顔立ちな警部だ。

「お話しの件は伺いました。ここでは何ですので別室で…」といかにも取調室のような部屋に通された。

「鈴木奈々さんの件ですが…残念ですが、おたくのお店で働いている奈々さんです。」

ショックで言葉が出ず、涙が溢れてきた。

「奈々ちゃんはどうして…亡くなったんですか?」聞いても警部たちは言葉を濁らせた。

「ただ死んだんじゃない」麗子は悟った。

「実は首を締められた跡がありまして…」佐藤警部が重い口を開いた。

「殺人…?」恐る恐る聞いてみた。

「まだ司法解剖中なのでハッキリとは…ただ現場は初日の出の客でごった返していましてね、有力情報がないか調べてる最中なんです。」

中田島砂丘といえば初日の出の名所だ。私も若い頃、まだ幼い勇気を連れて行ったことがある。

「奈々ちゃんの遺体は…どこにあったんですか?」

佐藤警部は発見された状況を教えてくれた。

午前6時30分頃、朝日が上り始めた頃に男性がトイレに松林に入った時に奈々ちゃんが倒れていたのを発見されたこと。

男性が110番して現場は騒然となったらしい。

「じゃあ、初日の出の客は皆まだ足止め…?」

「いや、流石にもうそれはありませんが一応、客の名前と連絡先は聞いてます。」佐藤警部は困ったそうな顔をして答えた。

「中田島砂丘の初日の出って私も行ったことありますけど…何百…いや下手したら千人くらい」

「えぇ…ざっと千人…千人の容疑者です。」




「実は今日奈々ちゃんとお昼に待ち合わせしてたんです。深夜にラインがきて…。」

「それは何時頃ですか?」佐藤警部が聞くと麗子はスマホを取り出しラインを見せた。

「深夜1時23分…年始の挨拶にしては少し中途半端な時間ですな。」

麗子も同じ疑問を感じた。

「あの…少なくても1時23分には奈々ちゃんは生きてたんじゃないでしょうか?」

「何ともいえません。奈々さん本人かもしれませんし、第三者…つまりたとえば犯人の偽装工作かもしれません。」

確かに今の世の中、ラインやメールが普及してるから赤の他人が奈々ちゃんのスマホを操作しても、まず気づかない。

「解剖結果が届かなくては死亡推定時刻もわかりません。ですが貴重な情報ありがとうございました。また協力をお願いするかもしれません。」

「私で良ければ分かる範囲で…。」麗子は連絡先とお店の位置を佐藤警部に教え警察署を後にした。

時間は午後の2時をまわっていた。本当だったら今頃、奈々ちゃんとお昼がてら相談にのっていたのに…。複雑な気持ちだ。

家に残した勇気が心配になり連絡をとった。そして遺体が奈々ちゃん本人だったことを伝え帰路についた。


「おかえり。」勇気が心配そうに出迎えてくれた。あれからテレビでニュースを見たらしく、スナックで働いていたと聞いて心配してたらしい。

「ありがとう。少し落ち着いたから」少しだけ嘘だ。

そして遅めなお昼を一緒に食べながら警察署で聞いたことを話した。

「中田島砂丘の初日の出って、結構人いるよね?300人くらい?」勇気が聞いた。

「佐藤っていう警部さんが言うには、ざっと千人だって…」

「千人!?」勇気はビックリした。

「まぁ千人っていっても実際は家族連れとか、中高生くらいの子とかは容疑者から外れるとは思うけど、でもやっぱり数百人はいるよね…。」

そういえば…。

「勇気、あんた友達から誘われなかったの?初日の出。」

「誘われたけど断った、日の出前だから深夜だし友達同士で行くみたいだから下手したら補導されそうだし…。っていうか誘った友達補導されたって中田島砂丘で!」

「事件現場じゃん!」

「うん。だもんで警察来て、何かなって思ったら遺体が発見されたからって帰れなくなって、中学生同士で来てるのばれて怒られて親に迎えにきてもらったり大変だったらしいよ。」

「今、危ない世の中だからね…実際奈々ちゃん亡くなったし…。」

その時勇気のスマホが鳴った。初日の出に誘った友達からだ。

「もしもし…えっ?テレビ?」

勇気は急いでテレビをつけた。

テレビには奈々ちゃんのニュースが流れてた。しかもマスコミが調べたのか顔写真つきで…。

少しだけ元気になったが奈々ちゃんの顔見る度心が痛む…。

途端に勇気の表情が暗くなった…。

「嘘でしょ…奈々…先生…?」

「先生!?」



「勇気!奈々ちゃんのこと知ってるの!?先生って!?」

勇気は信じられない!って顔で固まってる。

「勇気!」

「あっゴメン…また後で連絡する」勇気は電話を切ってまた固まった。

「勇気?知り合いなの?」

勇気は深呼吸した。

「半年くらい前にうちのクラスに来た教育実習の先生だったんだ。」

勇気は奈々ちゃんについて教えてくれた。だが目には涙が溢れている。

奈々ちゃんは半年前勇気の教育実習生として勇気のクラスに来た。

奈々ちゃんはキレイで明るく、分け隔てなく皆と真面目に接する姿勢から男女ともに人気があった。特に勇気には何故か他の生徒より色々気にかけてくれたらしい。

約1ヶ月の実習期間が終わって大学に戻ったと聞いたが、実際は私の店で働いていた。今朝奈々ちゃんと聞いて奈々先生のことを浮かんだが同一人物とは思わなかったらしい。

私も奈々ちゃんについて知っていることを話した。

奈々ちゃんが働き始めたのは時期的に丁度実習期間が終わった直後、印象は勇気と一緒だ。キレイで明るく真面目な子。まだ半年くらいだからプライベートのことまではあまり聞かなかったが、大学生で1年くらい前に両親が他界して学費を稼ぐために働くようになったらしい。そういえば夢があるって言ってた。

「夢ってなんだろう…」勇気はすっかり泣いていた。

「さぁ…でもきっと学校の先生だよね…」

勇気のスマホがまた鳴った。今度はラインらしい。

「母さん!これ!」

勇気が慌ててスマホを見せてきた。ラインにはこう書いてあった。

「実は中田島砂丘で奈々先生に会ったんだ。午前3時頃…これ警察に言ったほうがいいよね?」


1月2日 事件から一夜明けた。私は今警察署にいる。今度は勇気と一緒だ。私と勇気の表情は暗い。

「すいません。お待たせしました。」佐藤警部だ。

「こちらこそお忙しいところすいません。息子の勇気です。」

勇気と佐藤警部は軽く会釈した。

そして奈々ちゃんについて知っている限り伝えた。もちろん警察も奈々ちゃんについても調べていたが教育実習生として勇気の学校にいたことは知らなかったらしい。

「教育実習生ですか…きっと教師希望だったんでしょう…。」

「あの〜奈々ちゃんの両親が亡くなったというのは本当でしょうか?」

「間違えありません。1年くらい前でしょうか…交通事故で。」

「交通事故…」

「しかもひき逃げだったんです。不憫な子です。」

「ひき逃げって犯人は…?」

「まだ捕まってません。不幸にも目撃情報も周囲に防犯カメラもありませんでした。」

「目撃情報もないことはないのですが…」佐藤警部は言いにくそうに続けた。

「奈々さんがひき逃げした車を見てるのです。」

「奈々先生が?」勇気が声を出したことで麗子と佐藤刑事は驚いた。

勇気がいることをすっかり忘れ二人とも話に夢中になっていた。

「あの〜すいませんこれ以上子供の前でこの話は…」佐藤刑事が言うと

「構いません!聞かせて下さい。奈々先生のことを!」

熱意に押されたのか佐藤警部の話を続けた。

「丁度1年くらい前、奈々さんはご両親と一緒に初詣へ行って帰りに事故に遭遇したようです。幸いにも奈々さんは軽傷だったんですが、あまりに突然の出来事で車のナンバー、車種、色までもがうろ覚えだったらしいのです。ただハッキリと分かってるのが車のナンバーの浜松。あと何故だが犯人の顔らしくて…。」

「犯人の顔見たんですか?」麗子は驚いた。

「えぇ…ただそれだけでは犯人を捕まえるのは困難で…まだ捕まってない状態です。」

勇気がスマホを取り出した。ラインを見せた。

「僕の友達が昨日の午前3時頃、奈々先生と会ったらしいんです。」

「それは本当ですか?すぐその友達に部下を向かわせます。よろしいですか?」

「構いません。親御さんには説明しましたから。」

「ありがとうございます。」佐藤警部は急いでその場を後にした。

私達も帰ることにした。

「ねぇ、帰り近くの神社に初詣行かない?」私の提案に

「えっ?こんな時に?」と勇気は驚いた。

「こんな時だからこそ!今年になってやなことばっか!初詣行ってやな空気浄化しないと!」

二人の願いは決まってる。

「はやく犯人が逮捕されますように!」


1月5日。今日から仕事初めだ。

こんな時でもお客さんは来る。店を閉めるわけにはいかない。

あれから何人かのお店の女の子から事件のことで聞かれたり、今でも

事件のことで話がもちきりだ。

ただお客さんには関係のないことだ。とくに進展した話もなく今日をむかえた。事件のことはなるべく話を避けるように女の子たちに伝えお店の営業が始まった。

皆、気を遣ってくれていたのか奈々ちゃんの話題がないまま無事仕事初めの営業が終わろうとしていた。

カラン

お店の入り口の鐘がなった。

「いらっしゃ…佐藤警部?」

現れたのは佐藤警部だった。

「こんばんは、秋山さん。夜分遅くに申し訳ありません。」

「いえ…まだ営業中ですので…佐藤警部が来たということはあれから少し進展が?」麗子と佐藤警部は二人だけでカウンターへ移動した。

「えぇ…あれから勇気君の友達に聞き込みしまして、害者…つまり奈々さんは確かに午前3時20分頃、友達数人と会っていたらしいのですが、彼氏と来てるらしくすぐに別れたということでした。

あと司法解剖の結果が届きまして死亡推定時刻は午前3時〜5時頃、死因は首を締められたことによる窒息死だと分かりました。」

佐藤警部は申し訳なさそうに続けた。

「申し訳ありませんが秋山さん1月1日の午前3時〜5時頃は…」

「アリバイ…ですか?」やっぱり!と麗子は思った。

「申し訳ありません。一応、関係者全員に聞いて回っているので…」

「あいにく、その時間は寝てました。ただ奈々ちゃんのラインの件がありましたので、気になってあまり眠れずウトウトしていたって伝えたほうが正しいと思います。自宅には私と勇気がいましたが部屋は別々ですし、たとえ勇気が私を見てたとしても親子の証言ですし、信憑性はないですよね?」

「ごもっともです。」そして佐藤警部は

「ウィスキーをボトルキープできますか?」と尋ねた。

「え、えぇ…できますが…佐藤警部勤務中じゃあ?」

「いえ、私の業務時間はすでに終わってます。ここからはプライベートです。」

佐藤警部はグラスに注がれたウィスキーをロックで飲み干した。

「お酒好きなんですね?」ロックで飲み干す人も最近では珍しいので麗子は思った。

「えぇ非番の日は家でよく飲んでまして。」

「奥さん、お酒に理解があるんですね。」昼間から酒飲むダンナを良く思う奥さんもあまりいないだろうとも思った。

「残念ながら私は独身です。」

麗子は「あっ!」と思い「失礼しました!」と続けた。

「いえいえ刑事生活30年。犯人ばっか追ってましたら、婚期は逃しましてね〜。」警部はだいぶ酔っている。

麗子はいつの間にか笑顔になっていた。時間も忘れ二人とも笑いながら談笑が続いた。

「折言ったことを聞きますが、先程、勇気君と二人暮しと聞きましたがダンナさんは?」警部は酔った勢いで聞いてきた。

「ダンナは勇気が物心つく前に別れました。バツイチってやつですよ。」

佐藤警部は表情が少し曇り

「失礼なことを聞きました。」と頭を下げた。

「いえいえ、もう昔のことですし、私、こんな仕事してますが、

主人と別れた時は、まだ母も存命してましたので、仕事と育児もなんとかなりましたから。」

「前に思ったんですが、勇気君、年齢の割にはしっかりしているというか…強い何かを感じました。」佐藤警部は2日に会った勇気の強い眼差しを思い出していた。目は涙で溢れていたが、同時に強い正義感に溢れていた。

「あの目…あんな目力がある人は最近の刑事にもいませんよ。」

「警察の人が認めるなら本物でしょう。3年前に私の母が亡くなってから勇気には苦労かけてますから…。」

佐藤警部は深々と頭を下げた。

「ど、どうしました?佐藤警部?」

「いえ、先程はあなた方を疑うようなことを言ってしまい大変失礼しました!ただ私個人はあなた方が事件解決へ導く鍵だと思っています。」

「私と勇気がですか?」

「えぇ秋山さんたちは秋山さんたちが知らないところで、奈々さんと、そして犯人とも何か強い繋がりがあるとしか思えないのです。刑事の感…ですが…。」

仕事を終え、麗子は帰路についた。勇気が作ってくれた夕飯を口に運びながら先程の佐藤警部の言葉が気になった。

「奈々ちゃんと犯人との強い繋がり…か…。」


1月6日。今日は勇気の学校は始業式だ。勇気の足取りは重い。

宿題を忘れたわけでもなく、来年の受験の心配でもない、奈々先生のことだ。

始業式でもやはり内容にふれた。校長先生が話をしているが、生徒は目に涙を浮かべ、先生たちも皆泣いている。たった1ヶ月だけ一緒だったのに…奈々先生の人気の高さが覗えた。

いつもだったら明るい教室も皆、口数少ないせいか空気が重くて息苦しい。

勇気は耐えきれず教室を出たら、見覚えのある人を見かけ声をかけた。

「佐藤警部!」佐藤警部だった。

佐藤警部は驚いて勇気に駆け寄ってきた。

「しっ!勇気君!私が警察ということは他の生徒には内緒だ!いいかい?」

勇気は頷いた。

「佐藤警部…やっぱり奈々先生のことで?」

「あぁ1ヶ月だけだがこの学校の教育実習生として赴任してたんだ、先生たちの話を聞きにね…。」

「何かありましたか?」

「残念だが警察の内部事情を未成年の君に話せない…」

佐藤警部は勇気の目を見た。相変わらず強い目だ…佐藤警部は勇気の目が好きであり、苦手でもあった。この子に隠し事はできない。佐藤警部は悟った。

「場所を移そうか…。」

「でもそろそろ休み時間が終わっちゃいます。」

「分かった!今日は始業式で午前中で終わるだろう、あと1時間もない。正門近くの公園で待ってるよ!」


学校が終わり。勇気は急ぎ足で公園へ向かった。佐藤警部はコンビニの袋を掲げベンチに座っていた。

「せっかくだ。遠慮なく好きなものを飲みなさい。」

コンビニの袋の中はジュースでいっぱいだ。

勇気は迷わずブラックのコーヒー缶を選んだ。

「ブラック飲むのかい!?」佐藤警部はビックリしていた。

「やっぱり変わってますかね…」

「いや…構わないよ!飲みなさい!」


「奈々先生のことで情報があってね。身辺調査をしてたんだ、君の友達の…涼太君といったか…奈々先生が亡くなる前、中田島砂丘で会った際に彼氏と来てると聞いたらしいんだ。ただ奈々先生の大学や友達、そしてこの学校の先生方に聞き込みしても彼氏の存在すら浮かんで来ないんだ。」佐藤警部はコーラーを一口飲んだ。

「勇気君。先生方には固く生徒には聞き込みをしないように言われている。ただ生徒だから知っていることもあるんじゃないかと私は思っている。奈々先生は勇気君にとくに気にかけていたと担任の先生から伺ったんだが…」

「はい。うち母子家庭だし、母さんが水商売の仕事してるって聞いてから、母さんと基本昼夜逆転の生活だからすれ違いはないか?とか寂しい思いはしてないのか?とか色々と心配してくれました。ただ…」

勇気は言葉を詰らせた。

「すいません。彼氏がいるかいないかは分かりません。」

佐藤警部はやはりと思った。

「勇気君。私は君の目が好きだ。君の母さんにも言ったが君の目には熱い情熱と強い正義感に溢れている。ただ…今気づいたんだが、その目から何も感じないときがある。勇気君!君は何か知っているハズだ!しかし、それは信じられないこと、または不安なことではないのか?」

勇気は佐藤警部の目を見た。勇気は佐藤警部の言っていることが何となく分かる気がする。佐藤警部の目は熱い情熱と強い正義感に溢れている、そして何より僕を信頼している目だ。この人なら信じられる。

「実は一回だけ見てしまったんです。奈々先生が男の人と会ってるところを…それでその男の人なんですが…」

「誰なんだね?」

「校長先生でした…。」


続く

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