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元日本人だった私は伯爵令嬢となり正義と戦う

作者: hikari

 正義とは何か悪とは何か、貴族令嬢に転生してしばらくたって私は理解した。


 領民が餓えに苦しんでいたから、私はじゃがいもの作付けを行った。

 うちの家は、そこそこ大きな伯爵家。

 お父様に無理を言って、伯爵家所属の騎士たちを動員し畑を作りじゃがいもを量産したのだ。

 始めは喜んでもらえると思った。

 目的は、餓えからの解放でそれは成ったのだから。

 でも領民の反応は違った。

 騎士たちは言った。


「女の我儘で下賤な畑仕事などやらされた末代までの恥だ」


 農民は言った。


「あのじゃがいもとかいう作物のせいで、麦の値段が下がっちまったよ。まったく上は碌なことしねーな」


 領民が言った。


「じゃがいもはいらねえ、麦を寄こせ」


 騎士にも、農民にも、領民にもそれぞれに正義があり、私の正義『餓えから民を救う』は彼らの正義を踏みにじり悪となったのだ。


 それでも私は自分の正義を貫いた。


 不浄の物として食べられていなかった鶏卵の摂取を推奨した。

 これは、鶏卵の摂取を禁止していた宗教の正義と対立した。

 ふわふわメレンゲオムレツを作ってやった。

 民衆は正直だ。

 私の作ったふわふわメレンゲオムレツの味に勝てなかったのだ。

 私は、教会に嫌われ魔女と呼ばれるようになる。

 ふん、利や論で勝てないとなるとレッテル張りか!!


 現代知識のある私は、自分の正義を貫く。


 領内の物価がひたすら高騰したことがあった。

 これは、商人による買い占めである。

 天候不順もなく、その年の収穫は平年より良いくらいだったのだから。

 これは、商人たちの正義『金を儲ける』との戦いだった。

 私は、領内の通行税と関税を一時的にゼロにした。

 物価が高くなっている我領内に大量の物資が運び込まれた。

 もちろん運び込んだのは、私の息の掛かってる者たちだ。

 商人たちは慌てた。

 すでに引き返せないほど、買占めをしていたからだ。

 商人たちは、自分たちの正義により父上に働きかけた。


「通行税を取るべきです。関税を上げるべきです」


 商人たちの進言を父上は聞いた。


 だがそれも私のトラップなのだ。トラップ発動、すでに領内に大量の物資を運び込んでいる!!

 商人たちは、油断しそして買占めを続けた。

 結果資金はショートし破産したのだ。

 商人たちの正義が崩壊した瞬間であった。

 やったぜ。


 商人たちの中で私が悪になったのだ。


「くそっ、なんかおかしいと思ったらあの魔女が裏で画策してやがった」

「俺たち商人が損したら困るのは、お前ら貴族だろうに!!」


 そして私の正義が成った。

『物価を安定させる』という正義が。


 だけど、物価を安定して喜ぶ民などいない。

 それは安定しているのが当たり前なのだから。

 だから事の顛末を知った民はこう思った。


「あのお嬢様が、商人からうまい事、金を巻き上げたらしいぞ」

「それってそもそも俺らの金じゃねえか。じゃあ、回りまわって俺らが搾取されたってことか!?」

「なにそれひどい」


 私の悪評は増すばかりだ。


 異世界の伯爵令嬢になり、現代知識を使ってがんばった。

 食料の供給を上げ、悪習慣を取り除き、経済学を行使した。

 学校を作り、病院を立て、上下水道を整備した。

 女性の人権を向上させ、難民に寛容に接し、民に仕事を与えた。


 そのどれもが誰かの正義を壊す行為で、その都度私は誰かに恨まれる。

 最終的には私の評価は、こうなった。


『搾取するために民を太らせた。我儘な魔女』である。



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― 新着の感想 ―
[一言] 長期連載したらぜひ読みたいです。
[良い点] 飢えもせず為政者を我儘な魔女呼ばわりしといて、首がまだ胴につながってるってだけで、ものすごく良い領地だと気付いてる領民はどのくらいいるんだろうね? 十八史略の鼓腹撃壌「王様なんて俺の暮ら…
[一言]  >そのどれもが誰かの正義を壊す行為で、その都度私は誰かに恨まれる。 それはそうでしょう。 権益を奪われれば恨みます。 でも、その権益を持っていた人以外からは? つまりはそういうことなので…
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