グレゴリオファミリー拘束戦 事後
今回は前の話で起こったことの説明です。
前の章ではあまりシリアスに書けなかったので、次の章ははシリアスにいきます。
ストーリー自体にはあまり関係ないですが、よろしくお願いします。
「うー……ん……俺は誰? ここはどこ?」
記憶喪失チックなことを言いながら俺こと鷺村透哉はベッドから起き上がった。
どうやらグレゴリオファミリーでの一件の後、俺は気絶してしまっていたようで、恐らくハツキが家まで運んで来てくれたのであろう。
「……今何時だ?」
俺は200円+税の時計を見た。
「なんだ。まだ6時か。……ってこれ止まってるんだったぜ……」
時計が止まっていることに気付いた俺は携帯の時計を見た。
「……10時30分か。結構長い間気絶してたんだな」
と、そこで俺はベッドの枕元にメモが置いてあることに気付いた。
「なんだこれ……ハツキの電話番号かな」
そのメモの上半分には電話番号が大きく書かれており、下半分には
11時までに起きられたら連絡を頼む。
と書かれていた。
「いろいろ聞きたいこともあるし、電話するか」
俺は携帯のホーム画面から受話器のマークをタップし、ダイヤルの画面へ移動した。1文字ずつ間違えないように入力し、電話をかけた。
神曲と呼ばれるギルティクラウドの2クール目のOPが流れ、その後ガチャっという音とともにハツキが電話に出た。
「Hello?」
ハツキがなぜか英語で電話に出た。
「もしもし」
「Oh,Touya? I'm Hatsuki. What's up?」
「何の用かって……いろいろ聞きたいことがあったからさ」
「I see. I'll answer your question」
「まず1つ聞いていいか?」
「OK」
「なんで英語なんだよ」
俺は今一番気になっていたことを聞いた。
「嫌だったかい?」
嫌というわけではなかったが、話しにくいのでやめて欲しかったのだ。
「まあ別にいいけどさ。とりあえず聞きたいことが山ほどあるんだ」
俺はまずさっきのマフィアたちをあの後どうしたのかを尋ねた。
「あいつらなら元クライアントさん……僕らの依頼主に引き渡したよ。今頃卸売で失敗して売れ残った武器を持っていないかーとかで拷問とかされてるんじゃないかな。まああいつらの武器は全部僕が持って行ったから、あいつらはただ痛めつけられるだけになっちゃうけどね」
「ハツキさん、あんた最低だな」
「はは、それほどでも」
褒めていないのになぜか照れているハツキはあまり気にせず、俺は次の質問に移った。
「さっきのあれ……何が起こったんだ?」
俺はさっきの……あの状況から一気に逆転してマフィアを追い詰めるまでの過程について聞いた。
あの時、俺は全く状況を理解できずに気絶してしまったが、一瞬で逆転したということは覚えている。
普通は逆転できたからそれでいい、と言って過程を気にしないのかもしれないが、俺はまだひよっことはいえ新聞記者だ。過程が気になって仕方がないのだ。
「ああ、簡単だよ。最初、ビルの中に入ってロビーに置いてあった木箱に隠れた時、2人の男がなにかを蹴るような音と一緒に倒れてその後電源室の扉があいただろ? あれは僕の仲間の一人のシャドウっていうやつがやってくれたんだ。まあ透哉が見つかるのは想定外だったけど」
俺はその説明と同時にその状況を思い出す。
「じゃああれは幽霊とかじゃなくて……」
「そう、僕の仲間。魔術で姿を消していただけなんだ」
ハツキは普通に魔術、という単語を口にした。
しかし、ハツキたちの組織は魔術師の組織だ。そんなことは日常的なことなのだろう。
なので俺も口をはさんだりしなかった。
ハツキはそのままたんたんと続けた。
「次にあの刃が飛び出す銃だ。シャドウが気絶させてくれた二人組の男から取り上げた拳銃から弾を抜いて別の弾倉にしたんだ。あの拳銃は自動拳銃だったからグリップ(手で握る部分)の内側に弾倉を入れる。それを利用して作ったトラップがあれだ。うちの優秀な生成者が作ってくれたんだ」
クリエイター……恐らくウィキにもあったギミックという魔術師のことだろう。
というか、俺がもしあの銃の引き金を引いていたら俺の手は今頃血まみれだっただろう。
(なんつーもん渡してくれたんだ……)
俺はハツキに文句を言おうとしたが、ハツキは言わせねーよって感じで早口で説明を続けた。
「そしてスプリンクラーだ。あの建物の非常用電源……つまり、スプリンクラーを動かすための電源は主電源と一緒に電源室で管理されていたんだ。だから僕の仲間のラックってやつがシャドウの後に続いて電源室に入って非常用電源にかなり強い電圧をかけてもらったんだ。それから僕らが捕まって相手に近づいたときにスプリンクラーを作動させて一網打尽ってわけだよ。ちなみに合羽を着てくれって言ったのもこの時のためだよ」
「そうなのか……。でもなんでシャドウが電源室に入ってそのまま電圧をかけなかったんだ? そっちのほうが効率がいいんじゃないのか?」
「そうできたらよかったんだけど……魔術師は、火、水、風、金、光、闇の6属性のうち1人1個ずつ得意属性と不得意属性があって、で、電気は光の部類に入るんだけど、シャドウが光の属性を苦手としてるから、あんまり強い電圧をかけられないんだ」
「なるほど。ラックとシャドウはどのくらいの電圧をかけられるんだ?」
「ラックが最大1万ボルトぐらいだ」
「すげーな」
「シャドウは2マイクロボルトぐらいかな」
「しょぼすぎやろ」
あまりのしょぼさに関西弁が出てしまった。
「まあだいたいそんなもんだって。ちなみにラックには不得意属性がないんだよ。まあその分特別な魔術とかは使えないけど」
「魔術師って本当に小説とかみたいな感じなんだな」
「まあこれも小説だけどね」
ハツキが問題発言をしたが、それは無視して俺はもう1つ質問した。
「じゃあスプリンクラーを起動させたのは?」
「それはスコープっていう仲間だ。ギミックに頼んで弾を地面、壁、スプリンクラーというように跳ね返って当たるように作ってもらってスコープにその弾を装弾した狙撃銃でスプリンクラーに当ててもらったんだ」
跳弾……という技術だ。アニメなどでしか見たことはないが、本当にあったとは思わなかった。
「じゃあハツキがあの時今だーって叫んだのは……」
「うん。スコープへの合図だよ」
俺は本当に驚愕した。なぜなら今聞いた作戦が最初から構成されていて、ほぼその通りになったというからだ。
「まあグレゴリオにどうやってあの銃の引き金を引かせて隙をつくるかが一番の問題だったんだけど、透哉が無謀にも暴言を吐いて怒らせてくれたからね。ほんとあれは驚いたよ」
「いや、だってあれは……しょうがなかったじゃん」
俺はあの時の無謀で命知らずな自分の行動を恥じたが、ハツキはそんなことは気にしていないようだった。
「まあそのおかげで作戦は成功したんだし、結果オーライだよ」
と、ハツキは励ますように俺に言った。
俺は少しうれしかったが、ハツキの次の一言によってその嬉しさは全て消えてしまった。
「じゃあ、これからもよろしくね。また明日」
ハツキはそう言った。
そう、今の一言……これからもよろしくね……という部分。これはつまり、まさか、もしかすると……
「ちょ、もしかして、これからも……って、……」
俺が言い終わる前にハツキは電話を切った。
俺は時計を見て、夜中だしこれ以上話すのは迷惑かと思い、その日は電話しなかった。
が、俺はこの時、知らなかった。
今ここでハツキに、今日の取材でもうお腹いっぱいです、と言っておけば、次の日に命を危険にさらすことを回避できたことを。
それをしなかったために、次の日に人生で初めて外国に足を踏み入れることになるということを。
読んでくださり、ありがとうございました。
前書きでもあった通り、次はシリアスな展開になっていきます。ご期待ください。
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ドラクエをしながら待っておりますw