ピンチはチャンスなのだろうか?????
2日で1500文字とか言っときながら3500文字書いてしまった……。
すいません、長いですが、よろしくお願いします!
桜村市……その街の中心にあるビルの前で俺は一人の少年と出会った。
少年の名は過崎初希。マジックギミックスという傭兵組織のリーダーだ。
俺はその少年と出会い、そして半ば強引にグレゴリオファミリーというマフィアのビルへ連れて行かれ、今は入り口付近に積んであった木箱の陰に隠れている。
ビルの中は黄色の電球の光で包まれていて、まるでホテルのフロントのようだった。入り口から少し進んだところでT字に分かれていて、右に行くとエレベーターや階段、左に行くと電源室、と書かれた扉があるというような感じになっている。
「お、おい、ハツキ、本当に大丈夫なのか?」
「なにが?」
「なにが? じゃねぇよ! わかってるのか? ここがマフィアの本拠地だぜ?」
「だからここに来てるんじゃないか。透哉は何を心配してるんだよ」
だめだ……こいつ全く分かってねぇ……
「そんな丸腰でこんなとこに来て大丈夫なのか心配してんだよ! もし外でここの下っ端を無力化したことと、今ここに侵入してることがばれたら俺たちは多分殺されるなんてもんじゃすまないんだぜ!? 生きたまま縛られてコンクリート詰めにされるかもしれないんだぜ!?」
俺は必死にハツキに訴えた。が、その努力もむなしく、ハツキは驚くべき発言をした。
「大丈夫だよ。とりあえず早くメダギアやりたいから5分でここにいるマフィア全員拘束しようか」
「は……?」
俺は驚くことしかできなかった。5分でここにいるマフィア全員を拘束する……それがどれだけ難しいことかは誰でもわかるだろう。特に相手は多人数だ。殺すのなら爆弾をポイポイ投げてこの建物ごと破壊すればOKなのだろうが、拘束するということは少なくとも相手に近づかなければならない。なので、この状況では殺すよりも難しいことだろう。
だが、ハツキは余裕の表情をうかべ、イヤホンのマイクに向かって合図したらなんたらーとか、やっぱり地下に非常用電源がーとかなんとか言っている。
この余裕はなんなんだろうか。
「あ、もしかしてマフィアはほぼ全員出かけてて、今はボスが一人上にいるだけ……とか?」
「透哉……木箱の上から向こうのほうを見てみてよ」
「向こう……?」
俺は木箱の上からそーっと顔をのぞかせ、T字に分かれているところの少し手前のほうを見た。
「!」
そこには腰に拳銃をぶら下げた男が2人いた。
俺は驚いて思わず声を出してしまったが、どうやら気づかれてはいないらしい。
「ね、ねえ……ハツキ君? 思いっきりそこにマフィアがいたんだけど」
俺は声をできるだけ小さくしてハツキに話しかけた。
「そうみたいだね」
「そうみたいだね、じゃねぇよ! ボスだけじゃねぇのかよ!」
「何もボスだけ、とはいってないじゃないか。けど、今この階にはあの2人しかいないみたいだよ」
「そうなのか?」
「うん。あとの奴らは今14階のボスの部屋で総会議みたいなことをしているみたいだよ」
「なるほど。……って!敵が一カ所に固まってるのに、どうやってそいつらを拘束するんだよ! 近づいたら返り討ちにされるじゃねーか!」
「わかってるよ。あれを使うんだ」
ハツキは天井を指さして言った。
(あれ……?)
俺はハツキが指さした天井を見た。そこでハツキも同時に天井を見て言った。
「あ、ここには無いな」
「ねーのかよ!」
俺は思わず立ち上がって叫んでしまった。
「……あ」
一瞬の沈黙があり、その次の瞬間、その沈黙をT字に分かれた通路の手前にいた男が腰にぶら下がった拳銃を構えて破った。
「侵入者だー!」
「うぎゃえええええぇぇぇぇぇぇぇ! 見つかったああああああああああぁぁぁぁぁ!」
俺は全力で叫んだ。これが人生最後の叫ぶ機会だと思ったからだ。が、
「ぐへぇ!」
「ぎゃう!」
2人の男はバスッというなにかを蹴るような音と同時に情けない声を出して倒れた。どうやら気絶したようだ。
その数瞬後、電源室と書かれた扉がバンッという音とともに開き、ドンッという音とともに閉じた。
「……? 何が起きたんだ? まさか……幽霊が俺たちの味方になってくれたのか?」
「そんなわけないだろ。まあ、影なら、僕らの味方だけどね」
意味ありげにハツキが振り返ってつぶやき、そして視線をエレベーターのほうに戻した。
「とりあえず、エレベーターに乗るよ」
「ええ!? マジかよ……」
「文句言わない。記事書くためなんだろ?」
「へいへい……」
そう言ってハツキはエレベーターのボタンを押した。
ハツキは先ほど気絶した2人の男の手足を縄で縛り、そのそばに落ちていた2丁の拳銃を拾い、一方を俺に渡した。
俺はそれを受け取り、縛られた2人の男のほうを見て言った。
「亀甲縛りじゃないのか?」
「この小説を18禁にする気か?」
そんな感じで話しているとハツキは何やらごそごそと腰にぶら下げたバックパックのようなものから何かを取り出した。
「お? もしかして武器か?」
「いや、ちがうよ。はい、これ着て」
俺は武器かなにかかと期待したが、ハツキが取り出したのは100円ショップで売っているような普通のビニール製の合羽だった。
「なんで合羽!? スモークグレネード(煙が出る手榴弾)とかスリープグレネード(睡眠ガスがでる手榴弾)とかじゃねーの!?」
「そんな高い物買えんよ」
「傭兵組織なのに!?」
「まあ魔術師の組織だからな」
「ま、まあそうだが……」
俺は何を言ってもだめだと思ったので、仕方なく差し出された合羽を着た。
「でもなんで合羽なんだ?」
「それはあとでわかるよ」
そう言ってハツキがエレベーターのほうへ視線をもどすと、キンッという音が鳴り、エレベーターの扉が開いた。
「さ、行こうか」
ハツキがそう言ってエレベーターに乗り、俺もその後に続いて乗った。ハツキは14階のボタンを押し、そのボタンの右にある手すりに座った。
俺はさっきから気になっていたことをハツキに言った。
「さっき天井を指さしてあれを使うって言ってたけど……何を使うんだ?」
「ああ……スプリンクラーだよ」
「スプリンクラー?」
「まあどう使うかはまたあとのお楽しみってことで」
正直後のお楽しみ、と言われてもどうせ危険な目にあうのだろうという先入観のせいでまったくお楽しみにできない。
「そういえば、時間は大丈夫なのか?もう遅いけど……」
ハツキが唐突に聞いてきた。
まるで俺を自分の家に遊びに来た友達だと思うような口調で。まあ、それが不快なわけではないが。
「ん? ああ、まあ大丈夫だ。俺には親がいないからな」
「やっぱり……」
「え? やっぱりって?」
「あ、いや、ごめん。昔、透哉によく似た友達がいてさ。そいつも親がいなかったから。まあ、僕も親がいないんだけどな。妹がいるだけましだけど」
「そっか……ハツキも……。でも、妹がいるのか」
「まあね」
家族……家庭というものがあるのは本当にいいことだと俺は思っている。だから俺は少しハツキのことをうらやましいと思った。だが、ハツキも恐らく妹がいる、という点で苦労したこともあっただろう。それでもやはり家族というものは本当に大切だろう。俺はそのことを身をもって知ったのだ。
と、そんな風に考えていると、天井の端っこ……俺がちょうど真ん中に立っているので、向かって右斜め上になるところにせっかく俺が取り戻しつつある落ち着きを一瞬にして壊すようなものがあった。
「な、なあ……ハツキ、あれって……」
「監視カメラだね」
ハツキは普通に言った。そして普通に話し続けた。
「そうだ。透哉、知ってるかい?」
「こ、こんなときに……なにをだい?」
俺は完全に混乱し、さきほど取り戻しかけた落ち着きなど嘘のようになくなって、発した言葉の発音がおかしくなっていた。
「ここのボスの部屋には、モニターが1つあるんだって。自分のビルの上に上がってくるやつの顔を確認するための。で、そのモニター、どこの映像を映し出してるかっていうと……」
「お、おう……ど、どこにつながってるんだ?」
もうそのモニターがどこにつながっているかはわかりきっているが、一応僅かな確率にかけて俺は俺が予想する返答とは違う返答を期待した。が……
「君の右斜め上にあるそのカメラだよ」
ハツキはいつも通りの冷静な声で言った。
そしてその瞬間14階に到達し、キンッという音とともに扉が開く。そしてそこはまっすぐな通路になっていて、その通路に銃を構えた男が4人ほど立っていた。
ハツキはあくまで冷静な声で話していたが、俺は……
「は、はは……やっぱりなあああああぁぁぁぁ!」
今度こそ叫ぶことができる最後の機会だと思って情熱的に叫んだ。
読んでくださり、ありがとうございます。
展開が早いかなとか思っております。
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