再開
かなり長いです。
かなり長い期間空いてしまいましたが、よろしくお願いします。
俺こと鷺村透哉は、授業が終わり、これから家に帰って何をしようかと心を躍らせながら学校を出た。と、そこであることを思い出した。
「あ、そういえば、俺が書く記事、明後日が締め切りだったな」
そう、俺は桜村高校が誇る新聞部の一員だ。桜村高校は新聞部の活動が盛んで、この街の郊外に住んでいる方々に作った新聞を毎月無料で配って読んでいただいている。さらにその新聞に会社などの企業の広告も載せているので、そういった企業からお金が入ってきて部費も確保できている。もちろん学校外の方々に読んでいただくので、校内で起こったことを書くのではない。最近起こった事件の情報、話題、流行しているあらゆる物、料理研究部から仕入れた料理についての情報などの記事が書かれている。
そんな感じの新聞だが、俺はまだ何を書くか決めていない。というのも、先輩方が俺には記事のテーマなどを与えず、何を書くかは全部俺が決めることになったからだ。
「しかしやばいな……まだなんも考えてねー……」
そうやって何を書くか考えているうちに家に着いてしまった。
「まあ頭で考えたりするだけじゃ、なんもできないよな……。よっしゃ、ネットかなんかでなにかいい出来事がないか探してみるか」
ネット、それは3500年も前からあったらしいが、約100年ほど前に起きた災害かなんかのせいで文明やら人類やらがほとんど滅んでしまったから、今の科学は2018年ぐらいの科学力と同じになっちまってるらしい。
まあそんなことはどうでもいいので、俺は帰って手洗いうがいをして速攻でPCの電源をつける。
俺は小さい頃に親をなくして以来ずっと1人で生きてきた。だから家に帰っても家族が出迎えてくれることはない。慣れているので特になんとも思わないが。
「ん?これは……」
俺は面白い話題を見つけた。12チャンネルという掲示板にあったものだ。そこにはこんな題名がかかげられてあった。
「マジックギミックス3週間ぶりの活動再開か!?」
俺はこの題名に興味をもち、それを読み進めていった。すると、説明文のような書き込みがあり、それの途中で気になる文を見つけた。
「な……! 桜村市で今日の8時から活動が再開……って……! 今何時だ!?」
家具を揃える時にお金がなかったのでできるだけ安いものを探して買った200円+税のアナログ時計を見た。
「4時56分か……。あと3時間だな……」
俺の家は桜村市の郊外にあたる場所だ。活動が再開されると言われる中心部へは自転車でも約30分か40分ほどかかる。ちなみに桜村高校も中心部に少し近い場所にある。
「実質2時間ってとこか。早いとこ夜ごはん作っとくか」
そう言って俺は夜ごはんの準備をした。
-2分後-
「そういえば俺、マジックギミックスって具体的にはどんな組織なのかまったく知らないな……」
そうだった。俺はマジックギミックスについてニュースやうわさなどで聞いただけで詳しいことは全く知らないのであった。
「まだ時間あるし、ちょっと調べてみるか。」
そう言って俺は再びPcを立ち上げた。インターネットのアイコンをクリックし、慣れた手つきでマジックギミックスでヤフってウィキった(検索して某情報サイトにアクセスした)。
「んーと……なになに……。マジックギミックスは8人の魔術師で構成された自称傭兵組織のようなものである。活動中はお互いにコードネームで呼び合い、マスクやフードをしている。そのため、本名、年齢などの個人情報は一切不明である。……か……ん? 待てよ」
魔術師……そんなファンタジックな単語は小説や漫画の中でしか見たことがない。それに1か月前のニュースでもマジックギミックスが魔術師だなんていうことは一言も言っていなかった。だが俺にはそれがふざけ目的で書き込まれたものであったり、あるいはパソコン、インターネットの不具合というようにも思えなかった。「マジック」という単語が組織名にあり、そして活動も魔術のようなものを使ったものであっても、この科学が根付いた世界ではトリックだとか、タネがあるだとか言われて、本物とは信じてもらえないであろう。それなのにここに堂々と記載されている。そして俺もまた、この魔術師という単語に違和感を全く覚えていない。ということは……
「俺は中二病なのか……」
……じゃなくて、
「こいつらは本物の魔術師……なのか……」
俺は……思った……
なんという最高の記事の材料を見つけてしまったのだ……と。
「と、そうだ。マジックギミックスのメンバーのコードネームとかも覚えておかないとな」
そう言って俺はマジックギミックスのメンバーの欄を上から順に見ていった。
ライト マジックギミックスのリーダー。静かに活動をするため、誰もその姿を見たことはなく、得意魔術も不明である。ちなみに活動回数は2,3回程度である。男性である。
「ライトっていうのがリーダーか……」
マジック マジックギミックスのメンバー。女性。いわゆる回復魔術が得意で、メンバーが怪我をした時などは彼女が治していると思われる。
「回復魔術か。便利な魔術だな」
ギミック マジックギミックスのメンバー。女性。得意魔術は生成。罠や武器などのさまざまな物を作り出すことができる。
「反則級じゃねーか」
アサルト マジックギミックスのメンバー。男性。名前の通り、敵陣に突っ込んで堂々と戦う戦い方が得意で、よく活動地域の近隣住民に目撃されている。また、よく怪我をするらしく、活動後の現場には彼の血がターゲットの血と混じって飛び散っているということがよくある。
「? 魔術についての記述がない……? 使ってないのか?」
シャドウ マジックギミックスのメンバー。女性。得意魔術は姿など、存在を隠す魔術だと思われる。その魔術から、ライトのように隠密行動が主な活動内容である。しかし、ライトとは違って痕跡を全く残さないで行動できるので、今までの活動はすべて機密情報の奪取などである。
「潜入ミッションか……」
スコープ マジックギミックスのメンバー。男性。得意魔術は周囲認識。詳しくはわからないが、周りにいる物体や生物を認識できるという名前そのままの魔術であると思われる。
「索敵要員か……」
インフォ マジックギミックスのメンバー。女性。オペレーターおよび広報および情報収集担当。超美人でプロポーションもよく、頭の回転も速い。得意魔術は情報略奪である。
「??? なんでこいつだけこんなにいいように書かれてるんだ?」
ラック マジックギミックスのメンバー。男性。得意魔術はなし。しかしほかの魔術師よりうまく基本魔術を使うことができる。
「基本魔術……。ほかの魔術師よりってことは、魔術師は一人につき決められた一つの魔術しか使えないってことではなさそうだな」
俺は一通りマジックギミックスについての情報を読み終わった。その時俺は魔術師に対して、マジックギミックスに対してかなりの期待を募らせていた。
「マジックギミックス……か。8時になるのが楽しみだな」
-2時間後-
「くかー……くかー……スピー……ん?」
どうやら俺は夜ご飯を食べてから寝てしまっていたようだった。
「な! やばい! 今何時だ!?」
俺は200円+税の時計をみた。
「ほっ……よかった。まだ6時……って止まってんじゃねーか!」
あてにならない時計から目を離し、俺は携帯で時間を見た。
「やべ……7時半か……いや、まだ間に合う!」
俺は靴下をはくのも忘れて携帯だけを持って自転車に乗り、そのまま夜の街にくりだした。
-30分後- 桜村市中心部
「ぜー……はー……ぜー……はー……や、やっと中心部についた……」
自転車を走らせながらふいにつぶやく。
桜村市は2年前のある戦争で日本……というか、世界中の国が壊滅し、やむを得なく人々が移住してきた太平洋上の新大陸の北東にある新生日本の中で一番大きな都市だ。昼も夜も人通りが多く、にぎわっている。幸い、今日はあまり人がいないようだった。
「そういえば俺、どこで活動があるのか知らないんだった……」
なぜ調べなかったのだと自責の念にかられながら、立ちこぎで自転車をこぐ。
俺が今走っている道は車道のわきにある道で、歩道のようだが結構広くなっている。車道側に景観を良くするための木が5mほどの間隔で植えられており、その反対側にはたくさんのビルがつらなっている。そしてずっと一直線に続いている。
「景観を良くするために木を植えるって……ビル街じゃ逆効果じゃないのか……?」
次々と木の横を通り過ぎながらそんなことをつぶやく。
と、その時、俺の視界の端に人影がうつった。ただ人影が見えただけでは反応することはなかっただろう。だが、その人影はただの人影ではなかった。なぜなら……
「! 危ない!」
俺が視界の端にとらえた人影は今、ビルから飛び降りたからだ!俺は全力で自転車をこいだ。が、
「おうふ!」
「ぐへえ!」
ハンドルを曲げてしまっていたのだろうか、木の枝と俺の頭が激突して俺は自転車から転げ落ちた。
だが、そのときの頭の痛みも気になったが、俺が気になったのは俺が発した声ではない別の声だ。
なぜならそれは先ほど人が飛び降りたビルの方向からではなく、俺と自転車が分離して自転車が飛んで行った方向から聞こえたからだ。
「いってー。って、誰かに当たっちまったのか……」
声がした方向を見てみると、英国紳士風の帽子をかぶり、黒服を着ている痩せがたの男が立っていた。
そしてその男の足元に同じく英国紳士風の帽子に黒服を着た少し太ったいかつい顔の男が自転車の下敷きになっていた。
その男は自転車を自分の横に置き、立ち上がって俺に近づいてきた。
「おい! てめえ! あぶねーじゃねーか! 怪我したらどうすんだ!」
「す、すみません!」
俺はとっさに謝った。あれで怪我しなかったのかよ、とも思ったが、それは口に出さなかった。なぜなら、そいつらの服装から、こいつらの正体がわかったからだ。
「まったく、気を付けたまえよ」
痩せがたの男が太った男の言葉に相槌を打つように言った。
と、そこで太った男の後ろから、少年の声がした。
「あのー。すいませんが、グレゴリオファミリーの方々でしょうか?」
「あん? なんだお前。確かに俺たちはグレゴリオファミリーの構成員だが」
太った男が後ろに振り返りながら少年の言葉にこたえる。
下っ端かよと俺は思ったがそれは口に出さなかった。
「あーやっぱり。じゃあ作戦開始だな」
「あ? なにわけのわからねぇこと言ってんだ」
太った男はそう言って痩せがたの男と共に少年を囲むようにしてその巨体を動かした。
その瞬間、俺は驚愕した。太った男の肉が揺れていることにではない。
「久しぶりの活動だ。少し肩慣らしするか」
なぜならその少年は……
「活動再開!」
先ほどビルから飛び降りた人だったからだ。
読んでくださった方、ありがとうございました。今回はかなり長く、途中で書いた文字2000文字が消えるというハプニングがあったので一週間ほど空いてしまいました。不定期投稿ですが、今後ともよろしくお願いいたします。