日常
初投稿です。宜しくお願いします。
異能バトルです。
眼下、無数の光が広がる夜の街。
少年はその街のとあるビルの屋上の柵に座ってその光景を眺めていた。
「ああ、久しぶりに見たな。最近は夜の街をうろつくことはなかったしな」
少年はそうつぶやいた。
すると、少年の耳につけられていたイヤホンから声が聞こえ始めた。
「ハツキ、そろそろ始めて」
イヤホンからは透き通った少女の声が聞こえた。そして
「了解。それと、作戦が始まったらちゃんとコードネームで呼んでくれよ」
「あ、ごめん。ついいつものクセで......」
「まあ久しぶりだからな」
ハツキ、と呼ばれた少年はイヤホンのマイクにそう告げると、唐突に柵から降りてそのままビルからも飛び降りた。
~12時間前~
「はあ~……。今日もジメジメしてるな~」
やあ、みんな。俺は西暦5639年、6月13日、午前8時25分、国立桜村高校2年2組の教室で梅雨という季節に文句を言っている鷺村透哉という男だ。一応この小説では副主人公的なポジションになる。
「なんで副主人公なんだ……。主人公ではだめだったのか……」
「おい透哉、この小説、自称シリアス作家が書いてる小説なんだから、いくらお前視点のシーンでもそういう発言すると2話ぐらいで殺されるかもしれないぞ」
そう言って近寄ってきたのはクラス委員の一条楓だ。腰まで伸びた黒髪、整った輪郭、綺麗で透き通った目、抜群のスタイル、まさに清純、可憐といった言葉があてはまる容姿である。だが、普段はあまり他人とは話さない無口な性格であり、口を開いても少し荒っぽい口調で話す、という少し変わった少女だ。
「お前もその発言、なかなかのもんだぞ……。ところで、南雲を見なかったか?」
「涼か?涼ならそこでずっと落ち込んでるぞ」
俺の机は教室の黒板から見て一番前の一番右端にある窓辺の席だ。一条はその俺の机から左へ4席、後ろへ5席離れたところにいた机に突っ伏している生徒を指差した。俺はその生徒に近寄り、声をかけた。
「おーい、南雲君、どうしたんですかー?」
「はあ......今日も......今日もダメだった......」
南雲涼はそう呟いた。
「まさか南雲、今朝もやったのか?あれ」
「ああ、その通りだ。あれをやり始めてもう1年経つが......一回も成功しないとはどういうことだ......」
あれ、とは南雲が毎朝かかさずやっていること...食パンをくわえて道の角を曲がりまくって登校するという行動のことだ。こいつは毎朝道の角で女の子とぶつかって恋におちる、というシチュエーションを求めて登校中に94回も角を曲がるという奇行を繰り返しているのだ。
「よく毎朝続けられるな、そんなこと......」
「馬鹿だね......」
一条も呆れた顔で南雲を見て呟いた。
「でも一回だけぶつかったことあるんだろ?」
「いや、あんなので恋におちるかよっ!」
「ああ、ちょっとガタイのいい子にぶつかって吹っ飛ばされたってやつね」
「やめろ......、それを思い出させるな......」
そんな感じで話をしていると、教室に教師が入ってきて、だるい授業が俺たちを追い込むという、いつも通りの1日が始まった。
〜それから7時間後〜
「終わったー!」
俺は苦しい授業ラッシュが終わって歓喜の声をあげた。そして数秒後、教室のドアがガラッという音を立てて開いた。
「先輩ー。今日部活ないですってー」
そう言いながら教室に入ってきたのは我らが新聞部の期待の新星、1年生の結城美佳だ。
「ああ、そうなのか。わざわざ言いにきてくれたんだな。ありがとう」
「いえいえ。どういたしまして」
いつも通りの透き通った声で結城は返事をした。
「あ、美佳、今日用事とかある?」
結城に話しかけたのは一条だった。
「ううん、無いよ」
結城はそう答えた。
結城と一条、そして南雲はこの高校に入る前から知り合いだったらしく、お互いにくだけた話し方で接している。
「じゃあいつものとこで、いつもの時間、ね」
そう言って一条は教室を出ていった。
この会話はいつも聞いているので俺は気にも留めなかった。しかし、いつも聞いているこの会話......俺がいつも関係無いことだと聞き流していたこの会話が、後に俺の人生を大きく変える出来事に関係するとはこの時はちっとも思っていなかった。
貴重なお時間を割いて読んでいただいた方、ありがとうございます。神神神と申します。
初投稿なので下手くそなところもありますが、今後ともよろしくお願いします。