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第六話

歯車でございます。


今回は色々な人物の視点からのお話になります。



では、第六話をどうぞ・・・。


~ギルド職員ロッテ~


私は何時もの様にギルドの書類整理をしていた。

各方面からの依頼、冒険者からの報告、やることは山積みなんです。


「ハァ・・・」


なかなか終わらない書類整理にちょっと嫌気がさして溜息が溢れてしまいます。


バンッ!!


そんな時にギルドの入口のドアが勢い良く開いたのです。

その音のビクッとしてしまい、何事かと視線を移すと一人の冒険者が息を切らして駆け込んできました。何かあったのでしょうか?


「ハァ・・・ハァ・・・だ・・・誰か治癒術を使えるヤツは居ないか!?それと、医者を!!」


誰か怪我をしたのでしょうか?冒険者は危険と隣り合わせ。怪我をして戻ってくる冒険者なんて沢山います。でも、あの慌てぶりは・・・?

そんな事を考えていると、最初に入ってきた冒険者の後ろから、二人の冒険者に抱えられて誰かが担ぎ込まれてきました。

意識はないのか、その腕は力無くダランと下がっていました。


「ゆっくりだ!!ゆっくり降ろせ!!」

「おい!!治癒術士はまだか!?」

「しっかりしろ!!死ぬんじゃねぇぞ!!」


周りの冒険者も何事かと様子を見に行くと「ヒッ!!」とか「うわっ!?」とか言ってます。どうやらかなり重傷の様です。


「・・・!?」


そこで私は気付きました。その冒険者の傍らに置かれたバッグと二本の剣・・・。あれには見覚えがあります。

ガタンと勢い良く椅子から立ち上がり、走って駆け寄ると、そこには・・・。


「・・・・キョウスケさん?」


昨日、私に声を掛けてくれた冒険者。私がギルド職員に成り立ての頃、良く面倒を見てくれた冒険者。


「・・・ウソ」


素人の私にも分かる。

キョウスケさんの怪我の酷さを・・・。


「キョウスケッ!!」


振り返ると、そこにはギルドマスターが居ました。





~フォーリット~



「キョウスケッ!!」


嫌な予感はしていた。

昨日、キョウスケがここを訪れた時から・・・。


「キョウスケ!!しっかりして!!キョウスケ!!」


私はキョウスケの身体を抱きかかえる。

酷い・・・。全身は切傷で血塗れ。左腕はありえない角度で曲がっている。そして・・・。


「ゴフッ!!」

「!?」


大量の血を吐き出すキョウスケ。間違いなく肋骨が折れて肺に刺さってる。


「なにボサッとしてるの!?治癒術が使える冒険者を招集!!教会にも使いを出しなさい!!」

「は・・・はい!!」


慌てて動き出すギルド職員。


「どういう事なの!?」


キッとキョウスケを運んできた冒険者を睨む。


「俺達が樹海で依頼の沈黙草を採取した帰りに、発見しました。既にその状態でヤバいと思って連れ帰ったんです」

「恐らく何かと戦ったんじゃないかと・・・。かなり激しい戦闘の痕跡がありましたから・・・」

「そう・・・ギルドマスターとして礼を言うわ、ありがとう」

「冒険者仲間を見殺しには出来ませんから」


状況を確認した私はキョウスケに視線を戻すと、ある物に気が付いた。


「コレは・・・」


キョウスケの右手に握られた物。それはかなりの大きさの結晶。


「まさか!?」


私の脳裏に昨日のキョウスケの言葉が過ぎる。


『知人が呪紋を受けた』


私はキョウスケを睨む。


「アナタ!!まさか、単独で黒炎と!!」

「黒炎!?」

「嘘だろ!?」

「マジかよ!?」


私の言葉に周囲の冒険者達がザワザワと騒ぎ出す。


「馬鹿じゃないの!?黒炎なんて災害級・・・!!」


そこで私は気付いた・・・自分が涙を流している事を・・・。


「・・・・な・・・・・・・ろ・・・・・・ゴホッ!!」

「キョウスケ!?喋っちゃダメ!!」


何か言葉を紡ごうとするキョウスケ。だけどソレは言葉にならず、血が溢れるだけ。


「息してる事だけでも奇跡なのに、無茶しないでよ!!」


彼の頭を抱え込む私に、微かに・・・ほんの微かに彼の言葉が届く。


(泣くなよ・・・・死んでねぇだろ・・・・)


「バカッ!!」

「マスター!!治癒術士が来ました!!」

「早くこっちに連れてきて!!」

「はいっ!!」


絶対に・・・絶対に死なせないんだから!!





~カティ・サリント~


「姉様・・・」


私の前で静かに眠る姉様。

昨日、キョウスケに言われた言葉を思い出す。

黒炎を討伐しない限り、姉様は助からない・・・。


「姉様・・・」


私は泣いていた。

黒炎は私でも知ってる。災害級の化物・・・討伐するならかなりの戦力がいる事を。

昨夜、父様にも進言した。黒炎を討伐すれば姉様は助かるのだと・・・。

私の言葉を聞いて父様は優しく微笑んで・・・


『父様に任せなさい』


と言って頭を撫でてくれた。


「ウッ!!」

「姉様!?」


突然姉様が苦しみ出す。


「誰か!!誰か来て!!」


苦しそうに胸を抑えてもがく姉様。私にはどうすることも出来ず、家人を呼ぶと数人のメイドが来てくれた。


「お嬢様!?」

「お気を確かに!!」


メイド達が姉様を押さえつける。なおももがく姉様の服が捲れ、背中が顕になる。


「姉さ・・・!?」


姉様の身体を蝕む呪紋。背中一面に広がるソレは、私の目の前で徐々に小さくなっていく。


「ど・・・どういう事?」


暫くすると、姉様の背中の呪紋が完全に消える。と、姉様は大人しくなり、静かに寝息を立てだした。

まさか・・・解呪された?

でも、一体誰が・・・?


父様だろうか?もしかしたら、別の人だろうか・・・?

私には分からない。

でも、これだけは分かる・・・。姉様は助かったのだと・・・。





~バラス・サリント~


「黒炎討伐の特別部隊は!?」

「ハッ!!現在、鍛練場にて待機中です!!」


私は城内を甲冑姿で移動していた。

脇に控え追従する補佐官と共に鍛練場へと向かう。

黒炎・・・・確認されたのは一ヶ月程前。私の娘が所属する騎士団か樹海での討伐任務に赴いた際、遭遇したらしい。

20名からなる騎士団は壊滅。娘もなんとか帰還したが謎の病に伏してしまった。

昨夜、次女のカティが姉の病は呪いの類だと・・・黒炎の仕業だと言っていた。確かにアンデットや死霊が呪紋というモノを使う事は知っていた。だが、まさか黒炎までもが呪紋を使うとは・・・。



「全員整列!!」


補佐官の号令で部隊の兵が整列していく。

黒炎討伐の特別部隊。国の精鋭騎士と教会の神官騎士の混合部隊。


「諸君!!急な招集に応じてもらい感謝する!!我々は樹海に現れた黒炎の討伐任務にこれから赴く。黒炎は災害級の化物だ。放置すれば、後々に厄を撒き散らす!!早急にコレを滅せなければならない!!諸君の双肩に国の未来が掛かっている事を忘れるな!!」

「ハッ!!」


私の言葉に全員が勇ましく返事をする。


「では!!出ぱ「サリント伯!!」」


出発の号令を出そうとした所で、一人の騎士が駆け寄ってきた。


「どうした?」

「ハッ!!冒険者ギルドのギルドマスターからの伝令です!!」


ほう・・・あの『嵐姫』フォーリット殿からの・・・。


「内容は?」

「黒炎の討伐に成功したとの事です!!」

「なんだと!?」


騎士の言葉に兵士達が騒めく。

私もあまりの内容に目を見開く。


「真実か!?」

「『嵐姫』の名に掛けて・・・と」

「一体、誰が・・・」

「詳細は明かしてもらえませんでしたが、黒炎の核となる結晶も確認いたしました。宮廷魔術士長にも確認して頂いたところ、本物であると」


『嵐姫』が二つ名を出したのだ・・・それは真実なのだろう・・・。

しかし、ギルドには今、黒炎に対抗出来るトップランカーは不在のはず・・・。


「・・・何者だ?」


私は空を見上げ、一人呟いた・・・。






如何だったでしょうか?

フォーとキョウスケの過去は、いつか語られると歯車は信じております。

読者様からの御意見・御感想お待ちしております。


では、また次話でお会いしましょう・・・。


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