二、モンジロウ 「竹刀」「猫又」「ケーキ」
「めーん!」
私は野良猫に向かって、竹刀を振り下ろした。猫の額まで後一センチの所で竹刀をとめる。不意をつかれた猫は、悲鳴のような鳴き声をあげると走り去っていった。
「野良猫め!」
「美香ちゃん、さすがだね。県大会優勝の腕前はスゴイ」
友達の亜紀は感心して私を見る。私は竹刀を下ろすと、フーとため息をついた。
「モンジロウがもっと強かったら、野良猫なんかすぐに追っ払ってくれるんだけどねぇ」
私は飼い猫のモンジロウを見下ろす。彼は、居心地悪そうに、すごすごと私の前を横切って行く。モンジロウはもうじいちゃん猫。猫との喧嘩よりお昼寝を好んでいる。その上、甘い物好きだから、最近お腹か出てきてデブ猫と化してる。
「わっ、美香ちゃん! この猫しっぽが二つに分かれてるよ!」
突然、亜紀がビックリしたような声をあげた。元々ノラだったモンジロウは、拾って来た時からしっぽが二つに分かれていた。他の犬か猫に噛まれたか、事故にでも遭ったのかもしれない。
「前からだよ。そんなに驚かなくても」
「この猫、かなり年とってるでしょ!?」
亜紀は目を見開いたまま、モンジロウを見つめている。
「うん、何歳かは分からないけど、家に来て十年以上は経ってる」
「美香ちゃん! この猫は『猫又』だよ!」
亜紀は悲鳴に近い声で叫んだ。
「猫又? 何、それ?」
「猫の妖怪よ! 尾が二つに分かれてて、年をとってるの。人間の言葉を話して……そして、人を食い殺してその人になりすまして生きるのよ!」
「……そんな、馬鹿な」
亜紀はホラー好きだから。私は呆れるが、亜紀は恐ろしい物を見るようにモンジロウを見ると、そのまま慌てて帰って行った。
「この臆病なモンジロウが妖怪なわけないでしょ?」
私はモンジロウのしっぽを軽く引っ張る。モンジロウは立ち止まり、チロッと私を見上げた。確かに、尾は二つに分かれてて、年はくってるけど、その後の話しはね……。
「それよりお腹空いた。ケーキでも食べよっと」
亜紀と一緒に食べる予定だったケーキを私は思い出す。モンジロウのしっぽを放し、私は台所へ向かう。後からモンジロウも早足でついてくる。こういう時は動作が機敏だ。もしかして、モンジロウ私の言葉が解ったのかな?
『ケーキですって!? 美香さん、一人食いはいけませんぜ』
ふっと声が聞こえた気がして、私は振り返る。モンジロウは甘えた声を出してピッタリと私の後を追っていた。
私を見上げたモンジロウの顔が、ニヤッと笑っているように見えた。
「猫又」っていうのが何なのか分からずに、ネットで検索しました。(^^;) 猫の化け物のようなものでしょうか? 人を食い殺して、その人の姿に化けるという恐ろしい生き物のようですが、モンジロウは良い猫だと思います。




