表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
初桜  作者: azuki
1/1

芽生え

・・・・どうして・・・??

・・・・

・・・・

私は、自分だけで、道を切り開く。

誰の手も借りない。

・・・それで、十分だ。







「佐伯さんって、怖いよね~」

「そうそう。暗すぎるって~」

私は、友達のアッコとミツルと話していた。

「佐伯さん」っていうのは、うちのクラスの女の子。

顔は可愛いけど、雰囲気が暗すぎる。

ほとんど話さないし、前髪が、目を隠しているせいで、どこを見ているのかも分からない。

・・・彼女は、思いっきり、クラスから浮いていた。

「アッコ、今、同じ班でしょ??かわいそ~っ」

ミツルが、同情して言う。

「そうだよねぇ。あたし、クジ運悪いのかなぁ」

アッコも、笑いながら、そう言った。

私も、笑った。

「何言ってんだよ」

突然、「誰か」の声が、私達の後ろから聞こえた。

「何?」

ミツルが、思いっきり不機嫌そうに、その「誰か」を見た。

「何じゃねぇ!!佐伯の悪口は言うなっ!」

「誰か」・・・大宮くんは、それだけ、私達に言って、自分の席に戻っていった。

「何?あれ。感じ悪~」

アッコが頬を膨らませてそう言う。

・・・私は、後ろめたさを感じていた。


大宮くんは、明るくて活発な、クラスのリーダー格の男の子。

クラスの、学級委員を務めている。

そして、私の好きな人。

・・・・そんな事、言えっこないけど。


「大宮ってさ~、佐伯さんのこと、好きなんじゃない?」

ミツルがそうつぶやいた。

その一言で、私の心が固まる。

「だよねぇ??佐伯さんのことになると、いつも、ああだもんね?」

・・・・・。

私は、何も言えなかった。


そして、ふと、佐伯さんの方を見る。


・・・・・彼女は、いつものように、一人で本を読んでいた。

あんなに、暗い子を?

大宮くんが??


私の足は、無意識のうちに、佐伯さんの方に向かっていった。

「・・・・何??」

佐伯さんの冷たい声が、私の胸に重く響く。

『大宮くんのこと、どう思ってんの?』

そう聞きたいのに、言葉が口から出てこない。


そのときだった。

「何してんの?・・・・三根まで、佐伯のこと、イジメんの??」

大宮くんだった。

さっきまでの表情と違い、とても、寂しそうな顔をしている。

・・・・なんで、そんな顔するの??

そんなに、佐伯さんのことが好きなの??

「イジメられて、ないよ、聡史。私のところに来てくれたの」

佐伯さんが、そうつぶやいた。

・・・相変わらず、どこを見ているか分からない。でも、顔の向きは、しっかりと、大宮くんを捉えていた。

「そうか?・・・まぁ、三根は、優しいやつだからな?」

そう言って、大宮くんは笑った。


いつもは、大好きなはずの大宮くんの笑顔も、今は、不快なだけだった。

「・・・・大宮くん。佐伯さん、ごめん」

私は、そう言うと、アッコとミツルの元へ戻って行った。

「何?佐伯さんに、ケンカ売りにいったの??」

「やるじゃん、瞳っ!!」


もう、言い返す元気もなかった。

・・・なんで、大宮くんは、あんなに悲しそうな顔をしたのだろう?

どうせなら、怒った顔をしてくれたほうが、良かったよ。


私の胸に、小さな小さな、黒い何かが芽生えた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ