表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
風の時代  作者: velvetcondor guild


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/42

第十三話

桐谷家が釜山を離れる日。

引っ越しの荷物は、

もうほとんど運び出されていて、

部屋の中は、声が響くくらい空いていた。

松田母は、

玄関に立ったまま、

何を言えばいいか分からずにいる。

これまでの会話は、

全部「途中」で終わっていた。

大丈夫とも言われなかったし、

頑張れとも言われなかった。

だから、

最後も、

そうなると思っていた。

桐谷母は、

靴を履き終えてから、立ち上がる。

ドアを開ける前に、

一度だけ、振り返る。

松田母の顔を見る。

ここではじめて、

言葉を選ばない。

「もう、困らないわよ」

理由は、言わない。

何がどう、とは言わない。

それでも、

松田母には分かった。

「教わったから」でも、

「慣れたから」でもない。

もう、

自分で決められる、という意味だと。

桐谷母は、

それ以上、何も付け足さない。

言い切ったから、

もう十分だった。

ドアが閉まる。

鍵の音。

桐谷家は、

釜山を離れた。

松田母は、

しばらくその場に立っていた。

胸の奥に、

初めて、静かな重さが残る。

それは不安ではなかった。

「大丈夫」と

言われる前に、

自分で立てるようになった証だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ