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悪役王弟だが王都を追放されたので王位を簒奪することにした  作者: CJギガ
第四章  悪役王弟、女アサシンの標的になる
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2-1 ギイ、買い物をする

 イズーの強い要望で、まず武器屋へ行くことになった。

 ギイとしても大賛成である。


 一番大きな通りにある店をくぐると、巨大な剣が飾られているのが目に飛び込んでくる。


(これこれ! バカみたいにでかい剣を見てると、異世界に来たなって感じがする。テンション上がるなあ!)


 壁には様々な手持ちの剣や、槍も掛けてある。

 新品のように、まばゆく輝くものもあれば、使い古した戦士の武器を思わせる鈍い光を放つものもある。

 ファンタジーの武器好きにとって、夢の空間だろう。


『なあ、アリシア。イズーが持っている魔剣なんちゃらと同じような剣、この中にあったりしないか?』

『魔剣ノクティクレイモアですか? こんなところには、普通ないですよう。クルッポポー』


 アリシアは背負い袋の中から、呆れたように心話で返した。


『魔剣なんてものは、ダンジョンの奥で眠っていたり、謎のおじいさんから譲られたりするものですよう。ノクティクレイモアも、迷宮みたいなところで、誰かから譲り受けたという噂を聞いたことがあります』

『そうか……って、ダンジョン!?』


 ギイは思わず声に出しそうになった。


『リーファニア王国には、ダンジョンがあるのか!?』


『ありますよ。大きいのから小さいのまで。そちらにも似たようなものがあったでしょう? コフンとかピラミッドとかクノッソスとか』


『クノッソス以外はダンジョンかどうか微妙だけど……。とにかく異世界ダンジョンっていうのは、また違ったロマンがあるよ。行ってみたいなあ!』


 目を輝かせるギイに、アリシアは不思議そうに言う。


『ギイは虫が嫌いなのに、ダンジョンは平気なんですか? ヘビとかコウモリとかいますよ。もちろん、でっかい虫も』

『うっ……』


 一瞬ためらったが、ギイは力を込めて言う。


『せっかく異世界にいるんだから、ダンジョンを攻略したいな。虫除けの香を使えばがんばれると思う』


『じゃあ、近くを通ったら、イズーに言うといいですよ。危ないところが多いから、イズーが賛成するかどうか分かりませんが……』


「ギイ様、どうぞこちらへ」


 アリシアと話していることを知らないイズーが、ギイを呼ぶ。


「この中からお好きなものをお選びください」


 ギイはイズーが指さす先を見た。



 直径十センチほどのトゲ付き鉄球が、金属棒にくっついて、いくつも並んでいる。


(モーニングスター……? いや、違うな)

 鉄球つき棍棒(モーニングスター)にしては、棒の長さが短い。それに鉄球は棒の両端についていた。


 ギイは信じられない思いで訊く。



「これもしかして……ダンベル?」

「はい」


 イズーは、にっこり笑った。


「どれでも気に入ったものがあれば、おっしゃってください」


「気に入ったと言われても……。なんでトゲトゲのやつばっかなんだ?」


「武器にもなりますし、装飾としてもいいと思います。恐れながら申し上げますが、これが一般的なダンベルです」


 不思議そうなイズーに、ギイは強く主張する。


「トゲ、邪魔じゃね? ダンベルって、もっと丸くてツルッとしているのが普通じゃないのか?」

「ギイ様……どこからそんな不思議な知識を得られたのですか?」

「どこって……」


 自分の常識では、ダンベルはトゲなしだと言いたかったが我慢した。

 ここは異世界なので、トゲありのほうが常識なのだろう。


 ギイは、ずっしりと重いダンベルを持ち上げた。


「背負い袋に入れたら、袋に穴が空きそうだな」

「ご心配なく。普段は私のアイテムコンテナの中に入れておきます」


 ギイが眉を寄せながら、いくつかのダンベルを持ち上げたり下ろしたりしていると、後ろから背中を軽く叩かれる。


「兄ちゃん」


 振りかえると身長二メートルほどの、筋骨たくましい男が立っていた。

 おそらく店主だろう。


「あ、はい。何でしょうか……」


 気後れしつつもギイが訊ねると、男は白い歯を見せて笑った。


「迷ったらトゲの多いやつを選ぶ。それが(おとこ)ってやつだ」

「は、はい」


 迫力に押されて、ギイは両端にウニがついているようなダンベルを選んだ。


「こいつはいいものだ。初めてにしては、なかなかの目利きだな」


 店主は満足そうに言い、イズーから金を受け取った。


(トゲトゲダンベル、使いこなせるかな)


 イズーがダンベルをしまおうとするのを断り、ギイは自分のアイテムコンテナに入れた。一応自分のものなので、自分が管理するほうがいい。


(コンテナに入れたら愛着も湧いてきたな。トゲトゲもちょっとカッコイイ気がしてきた。上げ下ろししていたら、どこかに引っかけそうだけど。取り扱いに気をつけなくちゃな)


 また来てくれ、という店主の声を背後で聞きながら、ギイたちは店を出た。




 露店が並ぶ川辺を歩いていると、あちこちからいい匂いがしてきた。

 町に入る前に早めの昼食を取ったので、ちょうど小腹が空いてくる。


「ギイ様、よろしければこちらをどうぞ」


 いつの間にか肉の串焼きを買っていたイズーが、一本差し出してきた。


「ありがとう」


 ギイは素直に受け取り、さっそく口に運ぶ。



「……うっま!」


 脂身の少ない肉だが固くない。鶏肉に似ているが、違った肉の味も混じっている気もする。汗をかいて身体から塩分が抜けているせいか、よく効いた塩味が異様に美味しい。


 ギイが即座に完食すると、イズーがもう一本差し出してきた。


「こちらもどうぞ」


 今度は、ゆっくり味わいながら食べる。

(何の肉か知らないけど、うまいよなあ。たぶん原材料を考えちゃいけないってやつだろうけど……うまけりゃなんでもいいか)

 ギイの食いっぷりを見て、イズーが微笑む。


「少し早いですが、ギイ様もおなかが空いてらっしゃるようですし、いまから夕食になさいますか?」


 ギイは太陽の位置を見る。

 いまは真昼を少し過ぎたぐらいだ。さすがに夕食には早い。


「夜まで時間がありそうだから、食べ歩きぐらいがいいよ」

「では、あちらへ行ってみましょう。確か……もあったはずです。とてもおいしいので、ギイ様も是非召し上がってください」

「そうだな」


 単語が聞き取れなかったので、おそらく地球には存在しない食べ物だろう。

 ウニ型ダンベルのように、ギイの常識的にはありえない料理かもしれないが、食欲には勝てなかった。

 毎日の食事も謎の肉もおいしいのだから、イズーが勧めてくるものに外れはないだろう。


「途中でいいもの見つけたら、何でも食べよう」

「承知しました」


 露店は食べ物だけでなく、様々なものが売られていた。


 森が近いせいか、薪や炭、木工品も目立つ。山菜と川魚の干物も、この町の名産品だろう。

 斧や包丁といった刃物や新鮮な野菜は、川舟を使って運び込まれたのかもしれない。


 あちこちの露店を覗きながら、のんびりと歩いていると、アリシアが心話で話しかけてくる。


『いい匂いがしますねえ。さっきの串焼きですが、私の分は、ないのですか?』

『タヌキが串焼きなんか食ったら、串が喉に刺さるぞ』

『そこはギイが、上手に食べさせてくだされば……』

『歩きながら串焼きは無理だ。その代わり、フライドポテトがあったら絶対に買うよ。それだったら背負い袋の中でも食べられるだろ?』


 アリシアが袋から素早く顔を出す。


『忘れず買ってくださいね。一人一包みですよ。一つだけ買ってギイが八割、私が二割とかじゃ駄目ですよ。クルッポー』

『分かった分かった』



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