8 エピローグとプロローグ
ギイたち一行から一キロ以上離れた木の上に、その少女はいた。
「見ぃつけた。……えー、呑気にごはん食べてるー。いろいろと、ゆるゆるじゃん」
真っ直ぐな黒髪に赤のインナーカラーが入っている、特徴的な髪の毛を持つ美少女だ。
炎のように赤い目の中に金色の星形の輝きがあり、明らかに普通の人間ではない。
周囲に誰もいないことをいいことに、彼女は独り言を続ける。
「あれが王弟ギルロードかぁ。悪人だって噂だけど、やっぱガチだよね。何、あの雷ドーンってやつ。ヤバない? 連射とかできるのかなあ」
少女は左目の横に、人差し指と中指を軽く当てる。
目の中にある金の星が、さらに強く光る。
「おまけに、嘘つき。やったー、ぜーったい悪人だよね。助かるなー。えーっと、一緒にいるのは、でっかい騎士と……」
騎士が不意に、こちらを向いた。
少女は慌てて指を下ろす。目の中にある星の輝きが消えた。同時に髪の赤い部分も、暗闇に溶けるように黒に変わる。
少女は木の上で転がりそうになるほど、ゲラゲラと笑う。
「うわっはー、ヤッバ。あの騎士、ぜったいヤバいよ。こーんな遠くにいるアタシちゃんの気配を感じ取るなんて、おかしいよねえ。あれ、やっぱマジで剣聖なんだ。いやー、まともにやり合いたくないわぁ。超・邪・魔!」
少女は声に出して笑うのをやめた。
「王弟を、サクッと暗殺したいところだけど、あとで面倒なことになると困るしぃ」
そして小さく舌を出したあと、不敵に微笑んだ。
「まずは誘拐、しちゃおうかぁ」
少女の独り言を聞いている者は、誰もいない。
念のために周囲を確認したあと、少女はもう一度声に出して笑った。




