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悪役王弟だが王都を追放されたので王位を簒奪することにした  作者: CJギガ
第一章  謎の聖女と陰キャの王弟
11/48

3-6


 アリシアは励ますように言った。

 ギイは、ため息をつく。


(ギルロード)自身は、どう考えていたんだろうな。家臣と一緒になって、兄貴に楯突いていたのか、それとも単に持ち上げられていただけで、政争には全然関心がなかったのか……」


 アリシアは真面目な顔になる。


「ギルロード殿下がどういうおつもりだったのか、私には分かりません。クルルッポポー。でも、ご本人が知らない間に持ち上げられてそうですよね。なんといっても引きこもりでしたし」


「本当に兄貴に逆らう気がなかったのなら、巻き込まれて気の毒だよな」



 引きこもりで無気力だった、ギルロード――。


 外界のことに興味がなかったので、見ず知らずの人間と魂を混ぜられても抵抗しなかったのだろうか……。



 王弟ギルロードに思いを馳せているうちに、重大なことに気づく。


「なあ、いまのいままで訊くのを忘れてたけど、身体の持ち主のギルロードって、俺と魂を混ぜられたことをどう思っていたんだ? 普通はそういうの嫌だよな。もしかしてギルロードも、俺みたいに魂がパッカーンしていたのか? それとも身体だけでなく、元々魂も弱っていたというか、生まれつき半分ぐらいしかなかったのか?」


「それは……」


 アリシアは口ごもった。


 しばらく考え込んでいたが、やがてタヌキらしからぬ、どこか寂しげな表情になった。



「この件に関して、私から事情を説明するのは、やめておきましょう。――いつの日か、ギイ自身の心の中で答えを見つけられるかもしれません。……たぶんそのほうがいいと思います」



「そうか……」


 他人が土足で踏み入れてはいけない、ギルロードの魂の大切な部分なのだろう。


(本来のギルロードと俺の魂が完全に混ざったら、分かるんだろうな。なんたって自分のことなんだから)


 アリシアの表情が、呑気なタヌキらしいものに戻る。


「王家や貴族に関するいろいろなことは、旅の間に説明しますよ。長旅になるでしょうから、たっぷりお話しする時間もあるはずです」


「アリシアも一緒に来てくれるのか?」


「ええ。魔力が戻るまで、タヌキの姿でついて行きますよ。クルッポー」


 心強い言葉である。


「助かる、マジで。ありがとう」

「どういたしまして」


 アリシアは二本足で立ち、胸を張った。



 旅の仲間が増えた。


 一人は強そうな剣士。


 もう一人は聖女。


 いまの聖女は魔力切れを起こしたタヌキだが、きっと助けになるだろう。



「そうと決まったら、旅に向けて気持ちを切り替えましょう。たぶん明日にでも、追い出されるはずです。私からも旅の心得など説明したいことがあります」


「明日追い出されるって、早いな」


「裁判ができなかった代わりに、追放の計画は密かに立てられていたっぽいですよ。玉座の間でのやりとりは突発的なことではなく、陛下側のシナリオどおりってことなんでしょうね」


「そんな重要なこと、よく知っているな」


「タヌキになっている間に、庭とか城内とかで噂をこっそり聞きました。クルルッポポー。計画が成功したから、みんな口が緩んでいる感じです」


 人間が立ち聞きしていたら警戒するだろうが、タヌキだと気にも留められないのかもしれない。


(子供のころ見た時代劇でも「何奴! ……なんだ、ネズミか」ってシーンがあるもんな。動物だったら、秘密を聞き放題だ)


「アリシア。旅の間も、この調子で頼む」


「お任せください、ポッポー。あ、旅の最中も、お肉とおいもは食べさせてくださいねえ。おやつもたくさんくださいな」


 食い意地の張ったアリシアに、ギイは思わず笑った。



 そして、ふと思う。


(俺、アリシアに訊きたいことがあったんだけど……何だったっけ)


 重要なことではない。


 ただ――指に刺さった棘のように、些細だけれど気になることがあったのだ。


 思い出そうとすればするほど、記憶の底に沈んでゆく。掴もうとしても、指の間をすり抜けてゆくようだ。


(駄目だ、思い出せない)


 ギイは諦めた。


(ま、忘れるぐらいだから、大したことないんだろうな)


 きっと長旅の間に、ふと思い出すだろう。

 そのとき改めて、アリシアに訊けばいい。



 ――本当に大事なことならば。



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