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悪役王弟だが王都を追放されたので王位を簒奪することにした  作者: CJギガ
第一章  謎の聖女と陰キャの王弟
10/48

3-5

「玉座の間で国王陛下は証拠があると言いましたが、本当はギイを有罪にするには弱いのだと思います」


「そうなのか?」


「自信があるなら、あの場で詳しく言ってたと思いますよ。こういう理由でこれから投獄して裁判をする、みたいな」


 確かに国王は「情報を得ている」とは言っていたが、そのあとは、反逆は看過できないなどと、うやむやにしていた。


 初めて見た国王に圧倒されたので気づかなかったが、あの場ではっきりと断罪することもできたのである。


「エラソーだったわりには、肝心なこと言ってなかったよな。めっちゃ雰囲気作ってたけど、ハッタリだったのか?」


「全部がハッタリというわけではないでしょうが、もしかすると八割ぐらいは、その場のノリだったかもしれませんね。ポッポ」

 アリシアは、あっさり言った。


「ラスボス顔の王様のくせにテキトーなんだな。そういうヤツなのか?」


「ある意味賢いというか、策略家なのでしょう。だからこそギイの裁判をして、有罪まで持って行くのは大変だと分かっているのでしょうね」


「仲悪い相手が策略家ってのは嫌だけど、急に首を刎ねるタイプよりはマシか」


 ギイは少し、ほっとした。とりあえず今日死ぬ心配はしなくてよさそうである。

 安心したとたん、腹が鳴った。


「そういや朝メシの途中だったな」


 スプーンで自分の顔を見てから、ずっと洗面所にいたので忘れていた。


「私もおなかが空きました。あのぐらいでは食べ足りませんからね。ポポー!」


 アリシアは動物らしい、ギラギラとした目になった。

 ギイはタヌキの身体を持ち上げる。


「もう冷めたかもしれないけど、一緒に食うか」


 ギイとアリシアは朝食に戻った。


 料理は少しだけ冷めていたが、味は最高だった。

 オムレツとパンは、ふんわり。ベーコンは、がっつり。ポテトはサクサクだ。

 サラダもみずみずしく、食べているだけで健康になれる気がする。


 アリシアは、ずっと「おいも、おいしいですね。ベーコン最高ですよう!」と言い続けていた。



 満腹になり、ギイはフルーツジュースを飲みながら考える。


(やっぱ「死刑になるかも」って状況は、けっこうストレスだったんだな。腹が膨れたら、この世界も悪いことばっかじゃない気がしてきた)


 もしも城の中で「投獄、有罪、死刑」という流れだったら、逃げようがない。

 だが「旅の途中で暗殺」の場合は、逃げられる可能性も充分あるのだ。


(おいしい朝食も食えたんだから、悪いことばっかじゃないか)


「あの強そうな剣聖も、一緒に旅するんだよな。あいつは味方だよな? 戦力的には当てにしているんだが……」


「あのかたは大丈夫ですよ。とても生真面目で、裏切りとは無縁の性格です。真面目すぎて融通が利かないところもありますが、頼りになると思います」


「よかった。バリバリ敵を倒してくれそうだから助かる」


 アリシアは上品な動きで毛繕いをする。


「そもそもギデイン卿のご実家は王弟派ですから、どう考えても敵にはならないのですよ。安心なさってください」


 ギイは玉座の間でのやりとりを思い出す。


「そういやパワハラ兄貴も、剣聖の実家が俺の後見役とか言ってたな」

「よく覚えてらっしゃいましたね。さすがです!」


 アリシアは二本足で立ち、前足で拍手した。


「あのかただけでなく、他の有力貴族の中にも王弟派がいます。ギイは王様と関係が悪くなっていますが、お味方もけっこういらっしゃるのですよ。旅の途中で、こっそり助けてくれることもあるでしょう」


「味方がいるのはいいけど……」


 ギイは嫌な予感がする。


「なあ、もしかしてこの国、国王派と王弟派で分裂していたりする?」


 アリシアはもう一度拍手する。


「大当たりです! もしかして、いい具合に魂が混ざって、記憶が戻ってきましたか?」

「いや、ちょっと考えたら分かるというか……」


 ギイは頭を抱える。


「兄貴が俺を敵視する理由がよく分かった。織田信長と弟みたいなものか。兄弟どっちにも家臣がついて争うとこなんか、似てるよな。うちのパワハラ兄貴も(オレ)が目障りになるわけだ」


「オダノブナガ? お知り合いのかたですか?」


「いや、歴史上の人物だよ。学校で習うし、漫画やドラマやゲームの主人公によくなっているから、日本人はみんな知ってる」


「そんな有名な人も、兄弟で争っていたんですねえ」


 アリシアは感慨深げに言ったあと、無邪気に訊く。


「それで、オダノブナガさんご兄弟は、どうなったんですか?」


「……弟が兄貴に殺されて終わり」



 アリシアとの間に、一瞬気まずい空気が流れた。



「ギイはそうならないように、気をつけましょうねえ……クルクルポポー」



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