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――しかし私はどうやら致命的エラーを冒してしまったようだ。仰天した人間がやることに理非はなく、そいつらは意味もなく予想の斜め上を駆け抜ける。
いまや一〇〇名近くの悪党が詰めかけた前庭、そのうち二割は何ということか全裸であり、三割が素手半裸、残り五割の半数が手にしているのは得物ではなく、ズタ袋だ。大事なものでも入っているのだろう。
つまり総数の七割五分までが端から武装解除されており、拮抗するはずの戦力は瓦解した。ここは既に戦場では、ない。
「ふっ、ふざけんなよお前らッ!」
激昂である。滅してやりたいと思う。〝悪党の殺し方〟をレクチャーする予定が木っ端微塵になった私の、この、この、クソが!
とりあえず苛立ちのままに、ぽかんとしたツラの少数が持つ粗末な武器を蹴り飛ばしていく。その中に、この一党の頭目がいたのがまた、腹立たしい。何やってんだこいつら。もう少し真面目にやれ。
「……何やってんすか、姐さん?」
二分で平定した雑魚どもの前で怒髪天している私に、砦内から現れたリカルドが訊く。
折角の剣に赤い色がない。そうか。
「こいつらをどうしようか考えてた。首にするか、穴に埋めて居なかったことにするか」
「穴、掘りますか」
orzしてる元悪党の様を見て得心したらしく、忌憚のない提案をしてくる。
っと、重要なことを聞きそびれていた。それの次第でこいつらの命運が決まるんだった。
「中に虜囚は?」
「女子供は、いませんでしたよ」
「〝は〟?」
「鎖に繋がれたデカブツが――」
ほう。
「死にかけてたんで、いま、他の奴らが手当してます」
なるほど。
「そいつを見てくる。こいつらは好きにしていいぞ」
「虐殺は趣味じゃないんで、縛っておきますよ」
そういや、お前は、お前らはそうだったな。だからここに居るんだった。




