018
さては経由地へ向かう。ヒト族の領域の端っこ、黒の森に接しながら、我らが辺境領の加勢を得ていない唯一の国であり、冒険者ギルド本部のある都市、東のナハルホザ。この辺りの地勢はさほど宜しくない。
何故か。それで足りているからではなく、それしかなかったからだ。悪いことをすると戦闘団が来るよ、という教えが及ばない地につまらない悪行が蔓延るのは仕方がない。
「よう姉ちゃん。そのクルマ置いて逃げんなら突っ込むのは勘弁してやってもいいぞ」
これだ。どうしよう?
「良いぞおっさん、その調子で掛かって来い。斜めにしてやる」
乗ってみた。こういうのが多分、私の好みなのだろう。
「バカにすんじゃねえ! 俺ら爆裂紅蓮団は半端な仕事はしねえ、逆さになるのはてめえの方だッ」
いいね、とサムズアップして、渾身の拳を其奴の顳顬に打ち込む。ここで笑顔を忘れないのが肝だ。可愛げは男女を問わない。
「カシラがヤられた! 何だコイツ、強いぞ」
次はお前か。逃さんぞ。
「そら、悪党の矜持を見せてみろ。女のそれを披露してやる」
「畜生、全員でかかれ!」
総員抜刀、からのなっちゃいない連携を鉄拳で粉砕していく。身体強化は使わない、必要がない。
「うぼげら!」
「タコス!」
「はっはっは!」
頭目と思しき男以外を半殺しにして、戦闘は終了した。
斜めになったり逆さになって、己の今後を絶望的に想像している奴らに告げる。
「ようしお前ら、そこの悪党を換金しに行くぞ。担げ」
――同族を殺すことができるか。これはここに生まれ落ちてからの命題だった。如何に依っては私の生存に支障があるかも、と。まあ、杞憂だった。




