173 Halo
「あとは、そうだな。ここを管理する人員がいるな」
「ですね」
「私らはここを利用はするが、棲む訳じゃない」
「だな」
「しかし使わない時を空き家にするのは――」
「宜しくないですね」
「そうだ。だがしかし、砦からここに移住させて、まともに務まるやつがいるか?」
「おば――」
「おばさんは駄目だ。彼女を失ったら砦が崩壊するぞ」
「確、かにッ」
かと言ってここ、この国で求人を募る伝手などないし、そもそも獣人にヒト族の下働きのような真似をさせるのは、私の矜持が許さん。
「それなら、イーノックさんに頼みます?」
「それだ! あそこなら人は余ってるし、ウォーレンを作った実績もある、高値で引き抜いてやろう」
「作ったって」
「貧民窟生まれで、兄が武闘派なチンピラのあいつが、無造作にしてああ成るとでも?」
「そういやあいつ、学があって行儀作法にも通じてたよな」
「人格はともあれ、確かに」
「な?」
いい感じのを見繕って送って貰うとしよう。互いに儲かるだろう。
「ふんふん。辺境からの第一陣が着いたら、帰りに繋ぎを頼もうか。いいぞ」
「そんで、俺らはどこに?」
「前にも言ったが、黒の森を反時計回りに、ドワーフのとこだ」
「てっきり魔族の行方を追うのかと」
「他に何もなかったら〝森で木を探す〟のも悪くないが、いまは約束があるからな」
「そういや行方不明でしたっけ」
「約束って?」
「ワットのレットに依頼された。あの牙を鉤爪にするんだ」
「相手は死ぬ!」
「そうだそれだ。見てみたいだろ?」
「確かに!」
「……闇落ち、しませんよね?」
「問題なかろうよ。あの妹御には黄金の輝きを見た」
圧倒的な陽のオーラを纏ってたからな。ウォーレンは果報者だ。




