166 願いが叶う時
と、思ったのだが、姫さまのメインディッシュはこれからだった。
「有意義な余興であった。褒めて遣わそう。――それでは取引だ、例のものをこちらへ」
「お傍へ寄って、良いのですか?」
「ふふん。既に膝枕をした仲ではないか。構わぬよ」
「そう、でしたね。では、こちらを」
いつもの胸元から、革袋に収めた〝碧の電気石〟を取り出して、捧げる。
「おお……ああッ! これぞ正しく私の瞳!」
「あるべきところへ納まりました事、慶賀の至りに存じます」
「しかもこれは、雷の魔力を宿しておる」
「左様で御座います。聞く処に拠りますと、姫さまも――」
「そうなのだ!」
「ラウラ殿、雷を纏った姫様は、私よりお強いですぞ」
「うはあ!」
魔石を胸に抱いた姫さまのオーラが輝きを増す。
「め、目がー!」
聖なる光に耐性のないウォルターが悲鳴を上げる。闇属性だな。
「ああ、心地よい」
虎なのにレオンな虎のお兄さんは千歓万悦を噛み締めている。
「姫さまの光彩陸離が至高に近づいた瞬間に立ち会えたこと、嬉しく誇りに思います」
いやほんとに凄いわ。早く全世界に知らしめないとあかん。
「いいぞ! 漲る! 昂る!」
眩い光彩の中、姫様の体毛が白銀から白金へと変化していく。
「はは! これほどか! ならば表さねばな! レオ、あれを撃て」
「畏まりました」
床に肉球と爪の跡を残し、消える。
「どうなさります?」
「お披露目よ!」
「それは……大半が失神しますね」
「おっと、それはいかん。レオ!」
遠くから、応と返ってくる。以心伝心だな。
そして謁見台にて、王の覚醒が披露される。のちの祝日であり、祭日であり、記念日となる。幸福の始まりだ。




