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014

 家族に別れを告げて、出立する。ここにはきっと帰って来るが、この国には未練もない。幼少よりの因縁をねじ伏せて、やっと自由を手にしたのだ。この世界に対するチュートリアルすら、始まっていなかった私の、これが、ここからが。


 ――領へ来るまでに借りた馬は、所謂バトルホースという奴で、とにかく強い。小型の魔物であれば軽く踏み潰せるし、中型でもヒトを乗せていない一対一なら蹴り殺せる性能を持った、強い馬だ。要するにとにかく強いし、賢い。少なくともヒト族の言語であれば応えなくとも認識はしているとされ、飼い主に従属しているように見えるのは、それが水と飯をくれるからだ。


 生命の危険を排し、求めるに十分な食餌を与えて、初めて信頼関係が生まれるという、個人で飼うには些か荷の重い人類の友なのだ。一言で言えば高い。


 故に、私がこれから向かうのは東の隣国にある、魔導都市である。先に、この世界は中世と近代を混淆した代物だと評したことがあるが、それを興したのがそこであるとされる。

 尤も、その原動力となったのは汲めども尽きぬ勢いで魔物から魔石を採掘し、大陸にそれを行き渡らせた辺境領ではあるが。


 徒歩で、国境へ向かう。ただ歩くのが楽しい。総天然色にして無限の解像度の世界を自分の足で、意思で進めるのが喜ばしい。大まかな予定と不確実な目標に向かって進もう。

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