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130 いつもその時は思う
「あの子には、大きな世界で楽しくやって欲しかったんだけどな」
「私も、そう願いました。陛下にも了承を戴いて、なのに」
項垂れるスコットの背筋がデカい。背負うモノの大きさを支える自覚をしたら、こうなるのか。
「女公爵、か。響きは格好いいよな。当主は王族だとて王家への嫁入りもない。ある意味では、小さくとも最大限の自由を手に入れたと、言えなくもない」
「……私はあの子に、当代一の資質を感じました。一公爵の座に縛るのは惜しいのです」
――ならば王にでも、なるしかないか。いまの奴がいなくなれば、次だもんな。あとは力を示せばいい。
「仕方ない、私が出るか。死出の道行とて、それなりの同輩が――」
「それを始めたら、後戻りはできませんよ?」
「私はいつも、やりたいようにしてきた。いま、私が成りたいのはちび子の未来を切り拓く大鉈だ」
戦端の雄叫びを上げようとしたら、スコットが止める。何だ? いいだろ? 気分はもう、戦争なんだ。
「待って下さい。私が、必ず!」
いい顔をした。強い気持ちがある。父であり、護国の騎士の顔だ。悪くない。




