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「何だ、ありゃ?」

 山の此方側、隧道のほとりに街区らしきものが見え、オーエンの足が止まる。何だろうな。

「おこしやす?」

 看板もあるな。少なくともこちら側からの来訪を招いてるように見えるが、誰が来るんだ? ふむ、そうか。

「駅馬車、だと少し分かり辛いか。そうだアレだ。あれは所謂〝道の駅〟というやつだ」

 前世の知識がそれだと言っている。見た感じも概ねそのままだ。飲食に仮眠の施設らしき建築、物産――はある訳がないか。それはそうだ。

 自動車の代わりに馬車が停まっており、馬もいる。ん? ありゃうちの馬だ。魔導車の姿がないのは、ここまで来るもの好きが間に合っていないからだろう。


 駐車場にインターセプターを停めると、係員めいた若造が走って来る。驚きと喜色を混ぜた表情で、何故か万歳をしている。

「話は聞いております! 姐さん、姐さんですよね! お早いお帰りでそして無事であられること、うおおおおッ」

「ヤバいぞ、こいつ……」

「ヒト族はこんなんばっかりなのか?」

「違うわ! って、誰だお前。会ったことあった?」

「初めまして! エリックの弟のウォルターです! よろしくお願いしますッ」


 誰だエリック。うーん。ええと、――あ。


「もしかしてお前アレか? ナッキーのNo.2で双剣使いの?」

「はい! 兄がお世話になってます!」


 そういや、面構えは似てる。あいつから殺気と凶気を引いて、特大の笑顔を載せたらこんな感じに……って、レイルトレーサーみたいな薄気味の悪さがあるぞこいつ。なるほど、兄弟だな。


「出迎えご苦労。んで、何でまたここはこんな事になってるんだ?」

「はい! 最速でやれと頭とリカルドの兄さんに指示されましてッ」

「いや、私らはこないだ発ったばかりだろ。上手くいく保証なんて」

「姐さんがやることは概ね頭おかしいと聞き及んでおりました故!」

「くっそ、またそのネタか。流石に聞き飽きたわ。私はまともだ!」


 思わず戦闘態勢に入りそうになったが、いい加減耐性がついた私だ。軽やかに聞き流してやる。

「まあいいさ。ここの、これからの運用について、どう聞き及んでいる?」

「貴族と金持ちからふんだくって、恩を売りつけて、ズブズブにしてやれと仰せつかってます!」


 ふふ。私がいなくても、上手くやれているじゃないか。続きは飯を食いながらとしよう。

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