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集合!

 俺―伊藤(いとう)駿(しゅん)―は、塾の近くにある集合場所の駅に向かって自転車を走らせていた。今日は塾で知り合った友達たちと遊ぶ日だ。今日集まる五人のうち、ひとりだけ学校が違うから、塾の近くにある駅に集合することにしているんだ。


 俺は小学生のときからの友達、中野(なかの)颯一(そういち)の勧めで、地元ではよく名前が上がる「都有(とある)予備校」に中学一年の春から通い始めた。今日会う五人は、颯一も含めて、この都有予備校つながりで友達になることができた。


 駅に一番近い信号を待っていると、後ろから今日集まるもう一人が追い付いてきた。


「よ、駿! 何とか間に合いそうだね。」

「よ、悠太(ゆうた)! そうだな。この前の塾のテスト、どうだった? 俺、七〇点くらいしか取れなかったわ。」

「あぁ、九七点だったかな。一問計算ミスした。」


 石田(いしだ)悠太は、定期テストで常に学年一位を取っているすごいヤツだ。塾のテストは学校のテストよりも少し難しいので、学校のテストよりも点数が下がる生徒が多いが、悠太はそのテストでも毎回高得点を取っている。


「一問だけ!?間違えたの!?」

「そう、亘琉(わたる)は満点だったって自慢してきたよ。」

「やっぱすげぇな、お前ら…」


 坂本(さかもと)亘琉(わたる)は今日集まる五人の中で唯一通っている学校が違う。悠太が言っていたように、彼も成績が良く、成績順に決まる塾の席は悠太と並んで一番前を陣取っている。


 俺は学校での成績はわりと良いほうだが、塾での成績は悠太や亘琉ほどは良くない。やっぱりちゃんと勉強しないとテストで良い点は取れないよな。ゲームの時間減らさないとかな…


 目の前の信号が青に変わったので、俺たちは集合場所の駅に向かって進んだ。



 駅に着いて、自転車を駐輪場に止めると、すでに二人が到着していた。ひとりは俺を塾に誘った颯一で、もうひとりは今日集まる五人の中で唯一学校が違う、亘琉だ。


「おい、遅ぇぞ。」


 颯一がこちらに気が付いて声をかけてきた。


「いや、そっちが早いんだろ。まだ一応集合時間の前だぞ。」


 悠太が左手にはめている腕時計を見ながら颯一に反論する。俺は時計をはめていなかったので、駅にある時計を見た。集合時間は十四時だったが、今は十三時五十八分だ。


「そういえば、颯一。」俺は颯一に話しかけた。「この前見せてくれた料理おいしそうだったな。また作り方教えてくれよ。」

「あれか。あれは誰にでも簡単にできるからな。めっちゃ美味いぞ。」


 颯一は料理が上手で、たまに俺たちにレシピを教えてくれる。


「いや、お前の簡単は俺たちにとっちゃ簡単じゃないんだよ。」

「えぇ…?」


 亘琉が反論した。颯一は不服そうな顔をするが、確かに、難しい手順を踏むものがあったりするので、料理初心者の俺たちには作れないものがあったりする。出来上がりがおいしいのは分かっているのだけど!


「あとは加賀(かが)ちゃんだけか。」


 颯一がつぶやいた。


 集合時間になっても現れない、最後の一人は加賀敦也(あつや)だ。彼だけはなぜか名字で呼ばれている。


 特別仲が悪いとかそういうわけではない。特に、颯一と加賀ちゃんは同じバレー部だ。


 俺たちが立ったままダラダラと塾のテストのことだったり、学校で起こった面白いことを話しながら十五分くらい待っていると、ようやく加賀ちゃんが自転車に乗ってこちらに向かっているのが見えた。


 颯一が大きく手を振りながら加賀ちゃんに合図を送る。


「おお〜い!遅ぇ~ぞ~!!」


 加賀ちゃんはそれを見て立ち漕ぎになり、急いでこちらにやってきた。駐輪場に自転車を置いた加賀ちゃんは歩いてこちらまでやってきた。


「わりぃ。遅れた。」

「遅いよ、加賀ちゃん。」


 加賀ちゃんの悪びれもしない様子に、悠太が軽く注意する。ただ、加賀ちゃんが遅れてくるのは今に始まったことじゃないので、他のメンバーも特に気にした様子はない。


「今日はどこ行く?」


 俺はみんなにたずねた。このメンバーで集まるときは、どこで遊ぶかが決まっていることは少ない。とりあえず集まって、電車でどこかに行くこともあれば、自転車に乗って海の近くにある臨海公園に行くこともあるし、歩いて街を散歩するだけの時もある。


「今日はあっちの方に行ってみようぜ。あっちの方はまだ行ったことがないよな。」


 亘琉が線路の向こう側を指して言う。線路の向こう側にはこの五人の中のだれも住んでいないので、臨海公園に行くとき以外は線路の向こうへは行かない。亘琉が指をさしたのは、臨海公園とは反対の方向だ。


「いいね。じゃあ行こうか。自転車で行く?歩いていく?」

「歩きで良くね?そんなに遠くまで行かないでしょ?」


 悠太の質問に加賀ちゃんが答える。


「じゃあ、歩きで行くか。」


 悠太がそう言うと、俺たちの足は自然と駅のすぐ近くにある踏切に向いた。

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