君とふたりひとり(字足らずのワルツ)
眠り覚めてひとり
駅のホームひとり
桜仰ぎひとり
春は嫌とひとり
雨を聴いてひとり
濡れ葉薫りひとり
汗が冷えてひとり
扇風機とひとり
宵に呼ばれひとり
秋吸い込みひとり
月が燃えてひとり
君を想いひとり
故意に触れてひとり
熱を喰んでひとり
ひやり裸足ひとり
甘く蕩けひとり
轟く闇ひとり
蠢く愛ひとり
青と赤とひとり
藍に濡れてひとり
夢に沈みひとり
永遠の空にひとり
指に嵌めたひとり
君とふたりひとり
産声の「あ」ひとり
道が見えてひとり
やっと着いたひとり
安らかな夜ひとり
お裾分けよひとり
さび抜きでとひとり
酔いは少しひとり
焦げも味とひとり
涙拭いひとり
猫の眼にもひとり
手を繋いでひとり
今日もちゃんとひとり
わたしたちはどこまでいってもひとりだけど、
それはきっと哀しいことなんかじゃない。
永遠にひとりとひとりのわたしたちは、
ひととき手を繋ぐことは、できるのだから。
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お読みくださりありがとうございました。