始まりの街・9
見慣れない衣類に身を包んだ男は、ジェノーべファたち四人に会釈をするが、女は一瞥もすることなくアリアの前に立つ。
「北にいたのと、流れ込んできたのは全部片付けたよ」
「ありがとう、助かったわ」
淡いピンク髪の小柄な女は、顔色一つ変えずに淡々とアリアに報告する姿を見て、シエロは思わず話しかけてしまう。
「ちょっと待って! 二時間もかけずに北にいる魔物ぜんぶやっつけたの!?」
「え、そうだけど……」
神殿に戻るには、北にある門から一直線に進むしかない。
街の荒れ方からみて、相当な数の魔物が暴れていたようだが、それを二時間足らずで片付けてしまうとは、客人のふたりはかなりの実力の持ち主のようだ。
あまりのシエロの勢いに圧倒されて、女は珍しい物を見たような顔をしている。
「次はどこへ行けばいい?」
「いいえ、もう充分手伝ってもらったわ。先程の話の続きをしましょう」
「自分の世界がこんな状況じゃ、ゆっくり話もできないだろ。さっさと終わらせて、詳しく説明してくれ」
白髪の男はアリアに指示を仰ぐ。
男は今〝自分の世界〟と口にしたが、一体どういう意味だろうか。シエロは違和感のある言葉の意味を考えながら、アリアと男のやり取りを伺う。
「そうね……お言葉に甘えさせてもらうわ」
「ユキもそれで問題ないな?」
「もちろんだよ」
「男の子がコウセイくん、女の子がオウセツちゃんだよ。おれがヤバかった時に助けてくれたんだ! ジェノくんには敵わないけど、それでもめちゃくちゃ強いよ!」
「そうか」
マオはキラキラと目を輝かせている。
普段からジェノーべファが最強だと謳っているマオが、そう言った評価をするとは、二人はマオを相当かっこいいタイミングで登場して助けたのだろう。
「あんまり聞き慣れない名前だね」
「だな」
「五人ともこっちに来て」
アリアは七人の前で再び地図を指差す。
「マオとコウセイとオウセツは西へ。ジェノーべファとマヤは東、カナエとシエロは南に向かってちょうだい」
「この神殿って街の真ん中にあるんだよね」
オウセツの質問に、アリアは静かにうなずく。
「わかった、門を見ながらそのまま西に向かえばいいんだね」
「細かい道案内は頼むぞ、マオ」
「まかせてよ! ──行ってきます!」
三人は落ち着く間もなく、護りの間を後にした。
「おれたちも行くぞ」
「はい!」
「そうだな。三人とも怪我するなよ」
カナエの気遣いに、ジェノーべファとシエロとマヤは深くうなずいた。




