始まりの街・8
「アリア!」
ノックもせずに部屋の扉を開け駆け込んでくる高い声に、アリアは振り返る。夜空のような美しい長い髪が、名前を呼ぶ声に反応して揺れる。
「おかえりなさい、ジェノーべファ、カナエ、シエロ、マヤ」
「アリア、街はどうなってるの!? 壁の外にいた人が〝私に反応して魔物が現れる〟って言ってたよ!」
ジェノーべファたち三人が険しい顔をしている中、シエロはひどく取り乱した様子で、すがるようにアリアの腕を握る。
「落ち着いて、シエロ。──まずは四人とも、無事でよかったわ」
「あぁ。それよりマオはどこだ?」
ジェノーべファの質問に、アリアはコクりとうなずいて、街の状況とマオについて説明を始める。
「一時間半ほど前に、客人を二人連れて護りの間に来たわ。その二人に協力してもらって、今はマオと三人で街に出ているわ」
「客人? アリアも知らないヤツらなのか?」
「知らないと言うより──いえ、この話は今起こっている事を片付けてからにしましょう」
アリアの含みのある言い方に、四人は首を傾げているが、アリアは気せず話を続ける。
アリアは壁に掛けている地図を見ながら、四人に指示を飛ばす。
現在地であるロの字型の神殿は、街の中央に位置している。
「マオたちは魔物の被害が大きい門の近く、北側に向かったわ。あなた達は二手にわかれて、東と南に向かって」
「西はどうなってる?」
「魔物はいるみたい。ただ西側は畑が多いから、人や建物にはそこまで被害は出ていない。作物は諦めて西は後回しにするしかないわ」
「そんな……せっかく育ってたのに……」
マヤは眉尻を下げて顔を伏せる。
アリアにもマヤの気持ちはわかるが、人手が足りない以上仕方の無いことだ。
「魔物がいるなら、おれが西に行く。シエロとマヤは南、カナエは東に向かってくれ。──やれるな、カナエ」
「当たり前だ」
ジェノーべファとカナエはお互いの顔を見て、ニヤリと笑うが、アリアは首を横に振る。
「だめよ、一人で行くのは危険だわ」
「そうだよ、カナエもジェノーべファも、さっきので怪我してるでしょ? 諦めるしかないよ」
「大丈夫だ。ほら、マヤに治してもらったし」
カナエは顔を上げてシエロに首を見せる。
傷口は無いが、血が流れた跡が痛々しく残っている。
埒が明かない言い合いをしていると、不意にドアが開いた。
マオと先程アリアが客人と称した男女二人だ。
「マオ! 怪我してない!?」
「大丈夫だよ、マヤ。煌星くんと桜雪ちゃんがすごすぎて、正直出る幕がなかった……」
マヤは弟の無事を確かめるために、顔を見るなり駆け寄り、安堵の息を吐く。




