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女神の堕ちる空  作者: ニンニクゴハン
一章 始まりの街
14/18

始まりの街・14

 

 地下室から不要な分のテーブルやイスを持ってあがったジェノーべファたち七人は、その足で煌星(こうせい)桜雪(おうせつ)を部屋に案内していた。


「さっきから思ってたんだけど、煌星と桜雪ってピアスいっぱい開いてるんだね〜。あ、そのチェーンのピアス、ふたりでおそろいなんだ! かわいい〜!」

「桜雪さんの髪、長いのにきれいですね、耳の後ろの髪も三つ編みになっててかわいいです!」


 大人ばかりの環境で育ち、歳の近い子どもは煌星しかいなかったため、桜雪は女の子同士の会話がうまくできず、シエロとマヤから一方的に褒めちぎられてタジタジとしている。

 少し離れて後ろを歩く煌星は、その光景を微笑ましい気持ちで見ていた。


「煌星、にこにこじゃん〜」

「気のせいだ。──それにしても、地下室の真上のフロアの広さから察してはいたが、この建物は本当に大きいんだな」

「そうだな〜、この神殿はこういう有事の際にみんなが避難するために作られたから、街のなかでも一番デカい建物なんだ。

 それでもひとりに一部屋は割り当ててやれない、悪いな」


 カナエはパチンと手を合わせて、眉尻の下がった表情で煌星に詫びる。


「いや、むしろ都合がいいくらいだ。気づいてるだろうが、ユキは警戒心がかなり強いから、おれのそばを離れないだろうし、貴重な一室をむだにせずに済む」


 恐らく避難してきた各家庭に一部屋が割り当てられているのだろう。それでも地下室の真上のフロアや通路には、行き場を失った人たちが、チラホラと座り込んでいる。

 住む家を失い、安らぐ部屋すら得られなかった人たちは、硬い石畳のうえで夜を明かすのだろう。


「そっか〜、ありがとな、煌星」


 お前イイヤツだな〜と言いながら、カナエは煌星を肘で突く。

 煌星から言わせれば、こいつも大概イイヤツだ。


「ね〜、桜雪ちゃんって雰囲気あるのにマヤより小さいよね。身長何センチ?」

「マオ失礼だよ! ごめんなさい、桜雪さん」

「いいよ、気にしてないでマヤ。最後に測った時は一五四センチだったかな」

「え、ジェノーべファとほぼ三〇センチ差!? なにそれ、余計にかわいい! ねぇちょっとハグしていい?」


 許可を得たシエロが桜雪に抱きつくと、慈愛に満ちた表情で桜雪の頭部に頬擦りをする。


「これが十一センチ差のフィット感……」

「じゃあおれとは二一センチ差だな〜。初めて見た時から小さいと思ってたけど、本当に小さいんだな」


 カナエも煌星の隣りを離れて、桜雪にちょっかいをかけに行くと、ひとり分の間が空いて、煌星は噂によると一八四センチもあるジェノーべファと並ぶ。


 ジェノーべファは特に話題に参加するつもりは無いようだが、穏やかな表情で仲間を見守っている。

 無愛想と大柄なのが相まって、少し取っ付きにくい男かと思っていたが、それは煌星の勘違いだったようだ。


「あと少しで部屋に着きますよ!」

「ちなみにあそこに見えてる建物は、ジェノくんの温室だよ!」

「別におれの温室じゃない」


 近くの窓を開けたマオが、丘に建つひとつの建物を指さして紹介するが、ジェノーべファがすかさず訂正する。


「でもジェノくんの育ててる花しかないから、ジェノくんの温室じゃない?」

「へ〜、ジェノーべファは花が好きなんだな。どんな花が咲くんだ?」


 煌星が訊ねると、隣りにいるジェノーべファはなぜか一瞬驚いたような表情をする。


「済まない、何かまずいことを訊いたか?」

「いや、なんでもない……小さい白い花だ。十年に一度しか咲かないんだがな」

「ジェノくん、そのお花はいつ頃咲くの?」

「あと二年もすれば咲くだろうな」

「そっか、ならお花を見てからは帰れないんだね、残念」


 桜雪はシエロたちから離れて、窓から見える温室を名残惜しそうに見つめている。

 〝ザンコパ〟に帰れば、〝ナバ〟に来ることは二度とないだろう。しかし、煌星と桜雪には里を護る義務がある。花のために二年も里を留守にはできない。


 落ち込む桜雪を励まそうと、煌星が言葉をかける前に、角から出てきた初老の女性が、桜雪に掴みかかる。


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