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女神の堕ちる空  作者: ニンニクゴハン
一章 始まりの街
10/18

始まりの街・10

「アリア、戻ったよ」

「おかえりなさい、マオも煌星も桜雪も無事でよかったわ」


 煌星と桜雪は、二時間ほど前にマオに案内された地下の部屋に再び訪れていた。

 どうやら他の者たちはまだ戻っていないようだ。


「ずっとここにいたのか? 息、詰まるだろ」


 部屋を灯す明かりは充分に有るのだが、煌星はこの地下室に入ると嫌な息苦しさや薄暗さを感じてしまう。


 煌星は汚れのない石の壁をなぞりながら、何気ない質問をアリアにぶつける。


「ふふ、そうね。本当は私ももう少し明るい部屋に居たいのだけれど、この部屋からじゃなければ、街全体を均等な魔力の防壁で覆うことができないの」

「じゃあここは、本当に街の中心にあるんだな……それに魔力の防壁ってことは、アリア()魔力を物体に変換できるか?」

「そうよ。あなたはとても勘が鋭いのね。──その槍も魔力から創った物よ」


 煌星は出発前にアリアから譲ってもらった、白を基調としたシンプルかつ質素な槍に目を落とす。

 二回に及ぶ討伐で汚れこそあるものの、かなり乱暴に扱ったにも関わらず目立った損耗はない。


「煌星くん、アリアもってことは、他にもその力を使える人を知ってるの?」

「あぁ、おれたちの世界(ところ)の守護者も同じ力を使えるんだ」

「おれたちの所……? そう言えば初めて会った時、アリアのこと知らなさそ──」

「マオ、その話は待ってちょうだい。続きはジェノーべファたちが戻ってからよ」


 次々と疑問を口にするマオをアリアがたしなめる。

 少し不満げな表情のマオは、子供のようにアリアに口答えをしている。


 煌星の隣りにいる桜雪はというと、宮殿に戻ったあたりから眉間にシワを寄せて黙りこんでいる。

 おしゃべりな桜雪がこうも黙っていると不安になってくる。

 煌星は桜雪の顔を覗き込む。


「どこか痛むのか?」

「あ、ううん、怪我はしてないよ」


 桜雪は手をぷらぷらと動かし、無傷であることを煌星にアピールしたあと、少しの間口をつぐんだ。


「あのね。なにか大切なこと、忘れてるような気がして……でも思い出せないから、さっきからずっとモヤモヤしてるの」

「大切なものか……なぁ、ユキの忘れてる大切なものってなんだとおも──」


 桜雪にかかりきりだった視線を外して、煌星は振り返りながら意見を求めるが、その言葉を言い切る前に、こめかみを太い針で刺すような頭痛に見舞われる。


「いった……なんだ今のは……」

「ホシ、大丈夫!?」


 痛みでよろけてしまい、前に重心を崩してしまう煌星を、桜雪が咄嗟に支える。


「どうしたの、煌星くん? 体調悪い?」


 急に話を振ってきた煌星が顔に手を当てているのを見て、アリアとマオはきょとんとしている。


「ちょっと頭痛がしただけだ。気にしないでくれ」

「待ってて、おれ上からイスと水持ってくるから」


 マオはバタバタと地下室を出て、階段を駆け上がっていった。

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