ミカヅキ殺人事件
「ところで、さっきの召喚獣はなに?あれは貴方の物なの?」
「あれは借り受けたものだ。」
「誰に?」
「それは…それは………うぅ、あぁぁああああああ!!!!!!!!!!!!!!」
いきなりグレンツァが頭を抱え、激しくのたうち回る。
「どうしたんだ!?」
「わからない、魔法か呪術で記憶に蓋をされてる!!それにこの様子じゃ、身体も浸食されてる!!このバカ貴族から情報が流出しないよう、召喚獣について喋ったら殺すつもりだったの!!『グレーター・アンチスピル』!!」
ミカヅキが魔法無効化の呪文を唱えるがグレンツァはもがき苦しみ続ける。より高位の魔法なのか、それとも何らかの解呪条件を伴った呪術なのか。
やがてグレンツァは動く事をやめ、この場にひとつ死体が増えた。
「ミカヅキ殺人事件!!」
「なんで私が殺したことになるの!!」
ワカナの言葉にミカヅキがツッコむ。
「もう、みっちゃんは本当にガサツなんだから~、人はもっと優しく扱わないとダメだよ?天使でエンジェルなワカナちゃんが、みっちゃんの殺人罪を無かったことにしてあげるね。全能なる神王よ、彼の御霊を今一度この世に還し給え『トゥルー・リザレクション』」
ワカナにより蘇生魔法が唱えられ、グレンツァがゴホゴホと何かを吐き出す。
「復活したから良かったけど、どうせなら死ぬ前になんとかしなさい!!」
「なんか取り込み中だったからやめといたんだよ~。それに呪術だったら回復魔法で癒してもすぐまた死んじゃうでしょ?呪いを打ち消す魔法も『アンチカーズ』くらいしか持ってないし、それなら生き返らせたほうがいいかなって。ほら、蘇生魔法が使えるかの実験にもなるし。」
ワカナはサラッと不穏なこと口にしつつ、生き返ったグレンツァが窒息しないよう上半身を起こす。
「これが呪いの源か。まさかこんな物を飲んで気づかないわけはないし、魔法で体内に転移させたわけだな。」
俺はグレンツァが吐き出した物を拾い上げる。
手のひらに収まる小型の藁人形のような不気味な呪物。
ミッドガルドでは呪術師というクラスがあり、いわゆる我々が呪いとしてイメージするような魔法全般を使うことができるが、これもその一種なのだろうか?
オレ達は生き返ったグレンツァに再び召喚獣のことを問いかけるが、グレンツァからはまるでその部分の記憶だけごっそりとえぐり取られたかのように、要領の得ない回答しか返ってこない。
「蘇生対策も完璧ってわけね。特定のキーワードについて喋ると死をもたらす呪術にような魔法と、記憶を消去する魔法の2段構え。私の『グレーター・アンチスピル』も効かなかったし、仮に一人で二つの魔法を付与したのであれば、私達に近いレベル帯であることは間違いない。それに加えてあれだけの高レベルの召喚獣を封印できるサマナーかテイマーがいる………どういう意図があってこのバカ貴族にあんな危険な物を渡したかはわからないけど、注意する必要がありそう。」
ミカヅキの言う通りだ。人里離れた森の奥であったから良かったものの、もしアバドンが都市で解き放たれていたら…恐らく人々は逃げる間もなく皆殺しにされていただろう。
悪意があっての行動かまではわからないが、一度会って真意を確かめなければならないだろう。
しかし、その前に…。
「オークの村へ急ごう。この男の話が真実であれば、一人でも多く救わないと!!」
「ワカナの出番ね!!」
ラグさん、皆無事で居てくれ!!
オレ達はグレンツァや傭兵たちを半ば引きずるようにしてオークの村へと向かった。




