姉妹の亀裂!?
集合場所に着くとアツコの姿が見えた。
「兄様どうされました?顔色が悪いです。」
アツコの心配そうな声。
さっきの騒動でどっと疲れたオレにとって、アツコの慈愛に満ちた表情は女神の祝福にすら思える。
「ちょっとあってな。そうだ、コレを渡したかったんだ。」
オレはアツコに桜色のカチューシャを手渡す。
これを見る度にさっきの騒動を思い起こしそうで微妙な気持ちではあるが、アツコには悪い事をしたからな。包んでもらう暇が無かったからむき身でプレゼント感はゼロだけど、喜んでくれるといいんだが…。
「これは…私にですか?」
アツコが意外そうな顔をする。ひょっとして趣味じゃなかったか?
「そうだ。皆にも買おうと思ったんだが、色々あってとりあえず今日はアツコにだけな。すこし作りが可愛すぎたか?」
「いえ、とっても素敵です!!可愛いの大好きですから!!私だけ…本当に私だけに貰って良いんですか!?」
「ああ、もちろんだ。たしかアツコは可愛いデザインが好きだったと思ってな。喜んで貰えたみたいで嬉しいよ。」
「いま着けてみても良いですか?」
「鏡がないと大変だろ、手伝うぞ。これでいいか?」
カチューシャをつけるとアツコは気恥ずかしいのかうつむく。やはりデザインが可愛すぎたのだろうか。
「似合ってるぞ。」
カチューシャを整えながら改めて真正面から覗き込む。アツコ的には恥ずかしいかもだが、オレ的にはかなり似合ってると思う。
「…ありがとうございます。」
「往来のど真ん中で何やってるの!!恥ずかしいから奥行く、奥!!」
カチューシャをつけ終えると、どこから来たのかミカヅキが現れ、オレとアツコの手を引き裏路地に入る。
「ミカヅキどうした、いきなり。それに集合場所から離れたらサヤが困るだろ。」
「サヤなら私達が必死に隠れてもすぐ見つけ出せる。それよりあそこにいると恥ずかしいでしょ!!」
そうか、サヤはオレ達のパーティーの中でナナセに次いで探知の値が高い。特殊な隠密スキルを持たないオレ達ならすぐに見つけられるだろう。
「ミカヅキ、お疲れ様。」
アツコがミカヅキの方に向き直り口を開く。
「サヤが揃ったら宿にむかおう。特別豪華とまでは言えないが、綺麗なところが取れたんだ。」
「楽しみね、ミカヅキ。」
アツコの再度の問いかけにもミカヅキは無言だ。
「ミカヅキ、何を買ったの?この町、結構仕立て屋も多いみたいよ。」
「そうなの…。私は特に。」
ニコニコと笑顔で話しかけるアツコに対して、目も合わせず冷たい反応のミカヅキ…ひょっとしてアツコだけにプレゼントを買ったのに気づいて怒ってるのか!?
さっきも様子が変だったし、アツコの方を向かないのもそういう事か。
「違うんだ、ミカヅキ。皆の分も買おうと思ったんだが、色々とあってな。また今度埋め合わせをするから許してくれ。」
「何の話?」
「これよ、これ。気づいてなかったの?」
アツコがこれみよがしにオレが買ったカチューシャを見せつける。
「………気づかなかった。」
どこまでも素っ気ないミカヅキの態度。ヤバイ、オレのせいで姉妹の絆に亀裂が…。
「どう?似合ってる?」
「…アツコは顔だけは美人だから、何つけてても変だとまでは思わないけど。」
「そう?やっぱり似合ってる?兄様が私のためだけに選んでくれたの~。」
「悪くはない。ただ大事にしたいなら普段は外して置いた方がいいんじゃない。私達が身につけてる物みたいに魔法がかかってるわけでもないし、なにかあったらすぐ汚れるから。」
徹底的に直接誉めることを避けるミカヅキとそれを煽るアツコ。しかも、暗に私の前でつけて自慢するなっていってるし!!
ファミレスで散々学んだ『女性グループは一人だけ贔屓してはいけない』という鉄則を忘れていたオレの罪だ…。
あの店で起こった出来事を話せば少しは分かってもらえるかもしれないが、それはまた別の問題が発生しそうで言いたくないな…。
「今日はたまたまアツコに似合う物があったから買ったんだ。今度ミカヅキに似合う物があったら買ってくるさ。」
下手な言い訳はせず、ちゃんと埋め合わせをしよう。
「たまたま私に似合うのがあったんだって。ミカヅキに似合うのも見つかるといいわね~。」
ニッコニコで煽るアツコ。アツコにもこんな子供っぽいところがあったんだな…今はこれ以上ミカヅキを刺激しないで欲しいが…。
「いいわよ、別に。サヤも戻ってきたから早く行きましょう。」
サヤがこちらに気づいたのか笑顔で駆け寄ってくる。
本当に女の子のグループは難しい。
皆の分買えなかったのは仕方ないとはいえ、もっとこっそり渡すべきだった…猛省しよう。




