真の恐怖
正直現実世界であれば現場からダッシュで逃げ去り警察を呼んでくるような状況だが、一連の戦闘で少なくとも自分の力が一流と言われる冒険者を超えることがわかっている今、この程度のチンピラを恐れる必要はない。
「やめろという言葉が聞こえなかったのか?」
オレは手を離し、重々しい口調で問いかける。
こういう時は強者の雰囲気を醸し出すのが重要だろう。
いくら実力差があってもこの店のなかで戦闘をするわけにはいかないし、現実世界の感性が残っているため弱いとわかっていても凄まれると少し怖かったりもする…強者っぽいキャラを作ってロールプレイに徹するんだ、オレ!!
「ヒーロー気取りだとしたらとんでもねぇ間違いだぜ、兄ちゃん。こいつは俺らに金貨300枚分の借金があるんだ、払わねぇほうが悪いだろうが!!」
金貨300枚…日本円で3千万円!?
親の借金か、それともこいつ等に商売を邪魔されて店の権利を狙われているのか…いよいよきな臭くなってきたな。
「借金があればなんでもやっていいと思っているのか?それに彼女に非はないんだろう。怪我をしないうちに大人しく帰るんだな。」
我ながらクールに決まった。無頼の輩から罪のない少女を救う、まさに異世界転生の醍醐味だ!!
「そうです、帰ってください!!だいたい違法な賭け事で出来た借金なんて法的に無効です!!貴方達には銅貨一枚だって払いませんからね!!」
「そうだ、違法な賭け事で出来た借金は無効………。」
ん?
賭け事??
違法???
「なにが法的に無効だ!!てめぇが勝ってる時には気分良く金を持ち帰ってたじゃねぇか!!それが負けたら違法だ無効だって叫び回りやがって!!てめぇのほうがよっぽど悪質だろうが!!」
正論!!
輩の発言のほうが明らかに正論に聞こえる!!
え、っていうか、なに!?この子賭場荒らしなの!?
町のヤクザを敵に回してるのに堂々と営業してるの!?
賭場荒らししながら商品を子ども達とか言っちゃってるの??
「頂いたお金は神の恵みです。貴方達が失ったお金は天誅の代わりです!!神王に代わりに悪を私が裁いたんです、悔い改めなさい!!」
なんかメチャクチャなこと言い出した!!
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い、この子絶対危ない子だよ。
いや、まあ確かに違法なギャンブルで稼いでるこいつらも悪いけど、納得ずくで遊んで金まで持ち帰って、負けたら知らないと言い切るこの子は明らかにヤバイ。
これ以上巻き込まれないうちに退散を…。
「すいません、この人達が私を借金の方に娼館に売ろうとしてるんです…私がいなくなれば死んだ両親から受け継いだこの店も、ひもじい思いをしている妹達も…うぅっ。」
彼女の目から涙が溢れる…言ってることはメチャクチャだが、彼女は純粋にそう思ってるんだろう。
仕方ない、とりあえずこの場だけでも収めるか。
「事情はわかった。しかし、いくら借金があろうが彼女の意思に反して娼館に売り払おうとするのは少なくともオレの国では重罪だ。もう二度と彼女に関わらないというのであれば、お前たちの罪を見逃してやろう。今すぐ消えるんだな。」
「なんだと!!ちょっとばかし馬鹿力だからって調子に乗りやがって。構いやしねえ、腕の一本や二本折ってやれ!!」
男達はこれ以上にないほど小物っぽい事を言いながらオレに襲い掛かる。
オレのレベルは100レベル。純粋な魔法詠唱者で格闘術のスキルは一切持っていないが、それでも魔法なしで純粋な50レベルのファイターと同等に戦えるだけの力を持っている。
そのおかげか男達の動きは酷く緩慢で滑稽にすら思える…動体視力などもあがっているみたいだな。
オレはスローモーションかと勘違いするような男の拳を軽く受け止め、力を込めて握りしめる。
手のひらにグシャっという嫌な感触。
「ああああああああ!手が、手がぁ………。」
ん?グシャ??




