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いもうと無双は異世界転生と共に〜38才こどおじの異世界英雄譚〜  作者: 蒼い月
竜のねぐら

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ナーロッパ

 トロール討伐の依頼を終えたオレ達は、森のなかで野宿をし夜を明かしたあと、トロールに襲われた村をめぐりトロールの頭目を倒したこと、竜のねぐらにはまだトロールの残党が多く潜んでいてあまり森には近づかない方がよい事を伝えて回った。


 大人の前腕ほどもある8メートル級トロールの耳は、トロールの脅威を説明する際にこれ以上にない物証となり、村の人々はそんな大物を討伐したオレ達に尊敬の眼差しを向けた。


 ちなみにこれは余談になるが、この世界では人が森に入る必要性が現実世界よりもはるかに少ない。

 まだ辺境の町と村をいくつか見て回っただけではあるが、この世界の文明レベルは他の多くの剣と魔法のファンタジー物と同じく、いわゆる日本人が持つ中世ヨーロッパ的なイメージで構成されている。


 よく『ナーロッパ』などとバカにされがちな世界観ではあるが、こういった文明レべルは実際に冒険をする側からすると中々ロマン溢れる良い塩梅の世界観に仕上がっているように思える。


 城壁に囲まれた町には冒険者ギルドを筆頭に各種ギルドがあり、市場には物が溢れている。

 街並みは清潔とまでは言えないものの、生活するうえで不快ではない程度に整えられており、上下水道も完備されている。

 宿にはちゃんとベットがあり、一応ではあるが洗濯されたシーツまでかけられている。

 まともなランクの宿であれば手洗い場も存在し、ある程度上のランクの宿であれば風呂までついている。

 また食事については食器に乗った形で提供され、スプーンやフォーク、場合によってはナイフまで用意されている。


 ちなみにこれだけ文明が進んでいるにも関わらず銃火器は存在しない。


 歴史にある程度詳しい人間からすると、中世から近代までのヨーロッパの時間軸を圧縮してごちゃ混ぜにしたうえに、現代日本的な衛生観念を足したような頭が痛くなってくる謎の文明レベルだが、この辺りは恐らくこの世界の元となっているミッドガルドの影響が色濃く出ているのだろう。

 ミッドガルドでは設定上で整合性が取れないところがあったら全部魔法のせいにしてたからなぁ…ゲームとして面白かったから良かったけど。


 話が壮絶に逸れてしまったので本題に戻ろう。


 この世界の人間が森に入る必要性が低い理由としては『家庭魔法』の存在が挙げられる。

『家庭魔法』とはその名の通り一般家庭で使われる魔法で、この世界では日常生活のありとあらゆる場面で用いられ、本来であれば大変な労力や大量の資材を必要とする作業を魔法で簡単に進められるようになっている。


 そのなかでも最も重要なものが『火をおこす魔法』であり、この家庭魔法は魔法石と呼ばれる水晶体に込められた形で辺境の町でも簡単に入手することが出来る。どうやら家庭魔法が封印された魔法石を専門に取り扱う行商が世界各地を回っているらしく、どんな辺境の村でも家庭魔法の恩恵にあずかることが出来るのだ。

 ちなみに火を起こす家庭魔法のイメージとしては、旅館などで食事をする際に小鍋など温めるためについてくる青色の固形燃料に近いかもしれない。


 オレも勉強のためにひとつ買って使ってみたのだが、机などの固いところに火の魔法が込められた魔法石の尖った部分を擦り付けると着火され、縦に置くと弱火で長い時間、横に置くと強火で短い時間火を起こせる優れものだ。


 他にも水属性の魔法が込められた簡易水筒や、氷属性の魔法が込められた簡易冷蔵庫、衛生魔法と呼ばれる魔法が込められた簡易クリーニングなど、とにかくありとあらゆるシーンで家庭魔法と魔法石は活躍しており、ものによっては現代日本を超える利便性を誇っている。


 ちなみにミッドガルドでは、身につけている武具や衣服には『クリーン』という汚れや臭い清める魔法が自動的に付与されており、冒険者は常に清潔な状態で旅をすることが出来るという設定となっている。

 この世界にきて早くも3日経つがオレらの衣服が全く汚れておらず、それどころか身体ですら小綺麗なままなのは、この設定が家庭魔法の一種としてこちらの世界でもそのまま活きているからなのだろう。

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