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冒険者の矜持

「あんた達の弾除けに俺を使うってことか。」


 ルーフェのキツイ一言。

 しかし、実態としてはその通りなので返す言葉もない。


「オリハルコン級冒険者になったら今まで以上にモテますよ。ルーフェさん元々カッコいいですし。」

「まあ悪くはない顔立ちをしてるわ。兄様には敵わないけど。」

「それにオリハルコン級冒険者ともなれば、国の中でも指折りの名士に当たるんでしょ。出て行って数日で結果を出せば、あのエロ垂れ目を悔しがらせられるんじゃない?…あとアツコ、男の趣味ちょっと悪いんじゃない?」


 サヤがからかうように言い、アツコがフォローし、ミカヅキがダメ押しをする。

 会話の流れのなかでサラッとオレがミカヅキにディスられたような気もするが、そこは見て見ぬふりをしよう。


「わかったよ、わかった、受けるさ。ちょっと嫌味を言ってみたかっただけだ。実際俺の実績として申告すればオリハルコン級になれる可能性は十分だしな。竜燐級はあんたらみたいな化け物ばかりだからなれるとは思ってないが、オリハルコン級にはいつかなりたかったんだ。あんた達の実力を見抜いた俺の慧眼の料金ってことで受け取らせてもらうぜ。」


 ルーフェはまんざらでもない顔で言う。

 よかった、これで悪目立ちしなくて済む。


「話しは済んだか。我らは村に戻るぞ。」

「また人間の村を襲うようであれば、今度こそ命のやり取りをしなければならなくなる。村のトロール達にもよく伝えておいてくれ。」


 オレ達も村の人間が竜のねぐらの奥深くに行かないよう、よくよくトロール達の脅威を言い含めなければいけない。


「我らは闘争を好むが、一方的に殺されるのはゴメンだ。人間の村には手を出さないことを約束しよう。強き者よ、さらばだ。」

「最後にひとつ教えてくれ。大森林の邪竜はどんな姿をしてるんだ?」

「…100年も前のことだ、詳しくは覚えていない。ただ記憶にあるのは無数の首に七色の輝き。それだけだ。」


 ヤマタノオロチのような化け物ということか。

 恐らく大森林の邪竜はトロール達を遥かに超える強敵…想像するだけでも恐ろしい!!


「分かった、ありがとう。」


 トロール達が闇夜に消えていくと、辺りには静寂だけが残った。

 まだオレの身体のなかには初めての本格的な戦いの高揚感のようなものが、ほてりとなって残っている。痛みこそないものの、脇腹にはこん棒で殴られたほのかな感触がある。


 …なんというか正直メチャクチャ怖かった!!


 この世界でどれだけ強かろうが、所詮オレは喧嘩すらしたことがないしがない中年だ。

 目の前にトロールのような強大で強面の亜人が現れればどうしても足はすくむし、身は縮こまる。しかし、オレは妹達の兄。いつまでも戦いを恐れてはいられない。

 多くのクエストをこなし、経験を積み、いつかはミッドガルドでやっていたのと同じような自由な冒険をするんだ!!


 今日の戦い、そしてトロール達の生きざまは、改めてこの世界で冒険者として生きる決意をオレに与えてくれたような気がする。


 こうしてオレ達の異世界初クエストは無事終了したのだった。

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[一言] ヤマタノオロチさん、逃げてぇぇぇ(手遅れ
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