自慢の妹紹介します③
「さーちゃんがまた私の悪口言ってる~、いっちゃん信じちゃダメだからね。ワカナが一番心配してたんだから。天使嘘つかない。」
底抜けに明るい声でまくしたてるのは五女『ワカナ・ミーアシュタット』。
腰まである黒のロングヘアーと切長の瞳、赤い唇に白い肌、触れれば折れそうなほど細くしなやかな身体と、特徴だけを挙げれば知的でミステリアスな美少女といった感じだが、性格は一言でいうとアホの子。
活発、明朗、多動で考えなしに突っ走るタイプでありながら、思ったことを全て口に出すという危険な属性まで合わせ待つ姉妹一のトラブルメーカーだ。
ただ裏表の一才なく、どれだけからかわれても全く気にしないサッパリとした性格のため、姉妹間ではマスコット兼アイドル的存在として可愛がられている。
種族は天使で『エンジェル的には~』などと訳の分からない事を言ってはミカヅキにツッコまれるのがお決まりのパターンになっている。そういえば、自分のことを世界で一番カワイイと思っているという設定もあった気がする。
ワカナも本来であれば天使の輪と羽を持っているが、こちらもアイテムで隠している状態だ。
ワカナのモデルは大学時代に所属していた合唱サークルの後輩だ。オレは都内の私立大学に通っていたのだが、中高と陸上部にはいっていたもののほぼ幽霊部員だったため、どのサークルに入るか決めきれずふらついていたところ、地味めな優しい女性の先輩の勧誘により行き着いた先が、女子大とのインカレ合唱サークルだった。
合唱という『ザ・文化系』な分野かつ女子大とのインカレサークルということで、隠キャであるオレにも居心地のよい場所で、授業やバイトの時以外は常に部室に入り浸っていたのだが、そんなサークルに2年後輩と入部してきたのが彼女だ。
容姿はそのままゲーム上のワカナと同じで『文化系サークルの姫』という呼称が似合いそうな雰囲気を醸し出していたが、女子校育ちの生粋のお嬢様なこともあって、性格は甘えたで女子間でワイワイ盛り上がるのが好きだったイメージだ。
サークルの先輩女子も最初はサークルクラッシャーが入ってきたのではと警戒していたが、人懐っこく明るい彼女の性格がわかるとすぐに受け入れ、人気者になっていった。
しかし、それはあくまで彼女がサークルクラッシャーとなるような性格の人間でなかったというだけで、そのビジュアルと少し抜けた性格から、サークルの男子の矢印の半分以上が彼女に向いていたのは公然の秘密だ。
可愛くて明るくて人懐っこいとか、そんなのもう好きになるに決まってるんだよなぁ…。
オレも何回かそれとなく話題を合わせ、映画やスイーツ巡りに誘おうとしたのだが、誘い方がキモすぎたためか華麗にかわされ撃沈したのもいい思い出だ…なんかいい思い出が全部失恋の話だけども。
ワカナの性格は彼女の性格の特徴を大袈裟にして、年齢をグッと引き下げたようなイメージになっている。
そして、5人の妹の創造主とも言えるオレの名は『松田樹』。
ミッドカルドでは『イツキ・キーファーライスフェルト』と名乗っている。
オレ達の名字は全部ドイツ語で統一してみたんだが、少しカッコ良すぎたかもしれないな…妹達は全員絶世の美女と言っていいが、自分自身は現実のビジュアルを極限までイケメン風に修正しているものの、なにせ元が元なだけに美化したといっても限度があるからな。我ながら名前負け甚だしいのは否めない。
ただミッドガルドではもっとファンキーな名前のプレイヤーがたくさんいたから、オレ達の名前は決して目立っていたわけではなかった。
そう、ここがミッドカルドであれば。