賞金首
「賞金首を見つけたの」
「しょ、賞金首ですか?」
美女の言葉に受付嬢はしどろもどろになりながら繰り返した。
「ええ、ここに持ってくれば良いのよね」
美女は受付嬢を安心させるためか、ニコリと笑う。その笑みは明らかに作られたものであったが、見る者を魅了する。
「はっ、はい。ただですね、賞金首の捕縛依頼は危険性が高いので銀等級以上の冒険者しか受けられないんです。申し訳ありません」
「大丈夫、知ってるわ。依頼は受けられないのよね。ただ、偶然賞金首を見つけた場合は持ってくれば、依頼料の半額は貰えると聞いたの。たしか等級審査の方にも反映されるってね」
周囲の冒険者は二人の美女の会話に聞き耳を立てる。
「お嬢さん、そういう事であれば私達のパーティーに入りませんか?金等級が一人いて賞金首の捕縛依頼も受けられますし、女性の神官もいて冒険しやすいと思いますよ」
会話を盗み聞きしていた、パーティーのリーダーであろう青年が美女な声をかける。
「ごめんなさい、もうパーティーは組んでるの。他の女性を誘ってあげて、貴方のパーティーであればさっきの男みたいな厄介なのはいないでしょ」
サラリとかわされ青年はガックリと肩を落とす。
「失礼かとは思いますが、先程の方の提案は悪い話ではないと思います。銅等級の冒険者パーティーが依頼を経由せずに賞金首狩りをするのは危険です。あまり大きな声では言えませんが、冒険者狩りを生業にしてる賞金首もいるんです。ギルドの依頼として受ければ詳細な情報もお渡しできますし、既に組まれているパーティーがあるのであれば、そこに経験豊富な銀等級以上の冒険者を招くことを考えてもいいと思います」
「ありがとう、優しいのね。でも安心して、もう持ってきてるから」
「えっ?持ってきてるってどういう…」
ガタンッ!!
受付嬢が美女の言葉の意味を確認しようとした刹那、床が軋み、椅子が蹴り飛ばされる音がギルドに響く。
「あぶなっ………」
受付嬢の瞳には背後から美女に襲い掛かろうとする男の姿が映る。
「賞金首だってことがわかれば良いのよね」
美女は柔らかな声でそう言うと、認識票を受付嬢に渡すと、右手に持った袋をカウンターに置き、縛っている紐を引き抜き、同時に背後から襲いくる男をねじ伏せカウンターにその頭を押し付ける。
「貴方もココに並ぶ?」
押さえつけられる男の脇で中身の重みに耐えきれなくなった布袋がゆっくりと開いていく。
「銅等級冒険者、アツコさんですか………えっ?…………キャーーーッ!!!」
袋の中身を覗き込んだ受付嬢がギルド中に響き渡る悲鳴をあげると、袋からゴロリとある物が転がり落ちる。
力なくカウンターに投げ出されたもの。
それは幾つもの生首だった。




