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いもうと無双は異世界転生と共に〜38才こどおじの異世界英雄譚〜  作者: 蒼い月
あの日の記憶

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獣たちの宴

「一緒だね、私達。汚いし、ボロボロ。私もクローネも同じだ」

「うんっ」


 クローネに伝えなきゃいけないことがもう一つある。ずっと隠してた、もう口にしないと決めていた言葉。


「リーゼロッテ」

「えっ?」

「私の本当の名前。ケルキヤ王国第一王女リーゼロッテ。病気で死んじゃったお母様がつけてくれた名前なの」

「………リーゼロッテ?」

「ごめん、たくさん嘘ついてた」

「ううん、いいの、大事な秘密だったんでしょ?教えてくれて嬉しいの。リーゼロッテ、とっても素敵な名前。ローゼよりずっと似合ってる」


 クローネが笑ってくれた。

 この名前を誰にも言っちゃいけないとか、身分を隠さなきゃいけないとか、そんな事どうだっていい。私にはクローネの笑顔が何より嬉しかった。


「そうだ、このまま此処にいるとこいつ等の仲間が来ちゃう。近くにいると臭いでバレちゃうし、なるべく遠くに逃げないと」


 クローネはそう言うと、私の手を引きお屋敷にほうに向かって駆けだそうとする。


「そっちはダメ。私の屋敷に人間に、ううん、村の人達にもクローネが人狼だってバレちゃったの。みんな人狼狩りがどうとか言って、森を探すつもりなんだって。ごめんなさい、私のせいで………」

「ありがとう、それを伝えるために裸足でここまで走ってきてくれたんだね。わかった、一緒に森の奥に逃げよう。背中に乗って」

「えっ、でも………」

「大丈夫、アタシは力が強くて足が早くて凄いんだってリーゼに自慢したいだけだから。ほらっ、掴まって」

「うん!!」


 クローネの小さな背中に乗ると、心細さが吹き飛んで、どこまでも駆けて行けそうな、そんな気持ちになる。


「キャーッ!!助けて、誰かっ、お願いっ!!」


 クローネが走りだした瞬間、遠くから微かに叫び声のようなものが聞こえた。


「いまのって」

「悲鳴…だと思う。女の人の。助けに行こう」

「でも、きっと村の人だよ、クローネを探しに来た人達からはぐれたんだと思う。見つかったらクローネが掴まっちゃう。悲鳴を聞きつけた他の人達が助けに行くはずだから、私達は先に逃げよう。いつ見つかってもおかしくないよ」


 クローネは背中にのった私をゆっくりと地面に降ろす。


「安心して。様子だけ見にいって、女の人が大丈夫そうなら他の人にバレる前に逃げるから。リーゼはここで待ってて、すぐに戻ってくる」

「嫌、私も走って一緒に行く。もし村の人達に掴まっても、クローネが良い子だって、私を助けてくれたんだって言えば、きっと信じてくれる。私は悪い人狼なんて知らないって、私が知ってるのは優しくてカッコいいクローネっていう友達だって、何度でも説明するから」

「わかった。行こう」


 クローネが真っ暗な森のなかを駆けだす。早くて、見失いそうになるけど、懸命に追いかける。1分ほど経つと次第に悲鳴が近くなっていく。


 少し開けた場所に出ると、大人の女性が沢山のゴブリンにのしかかられて、何かをされていた。服はビリビリに破られて、身体中に引っかき傷がある。ゴブリンは悲鳴を楽しんでいるみたいに、頭を叩いてはゲラゲラ笑ったり、わざと胸に爪を突き立てていた。

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