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いもうと無双は異世界転生と共に〜38才こどおじの異世界英雄譚〜  作者: 蒼い月
あの日の記憶

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綱引き作戦

「ふふっ、クローネさん、綱引きって知ってますか?」

「どうしたんですか、急に!?綱を引く??そのような風習はケルキヤ王国には………」

「綱引きは二組に分かれ綱を引きあう単純な遊びです。もし綱引きを知らない屈強な冒険者10人と、綱引きの訓練を受けたか弱い女性10人が勝負をしたらどうなると思いますか?」

「知りません、無駄口叩く余裕があるのなら、もっと全力で引っ張ってください………」

「力任せではダメなんです。綱引きは一見力が強いほうが勝つだけの浅い遊びに思えます。しかし、違うんです。相手が全力で綱を引いているところでふと力を緩める、そして次の瞬間タイミングを合わせ二人が寸分たがわぬ動きで綱を引く………工夫で力の差を埋めることが出来る。高度な戦略ゲームなのです。そして似ていると思いませんか、綱引きと釣りは」

「それはつまり………」

「クローネさん、力を緩めてください!!」


 掛け声を合図に竿を引く力が弱まる。


 レッツショータイム!!


 オレは身体から一切の力を抜く。

 竿が急速に湖面へと引きずられ、オレとクローネさんの身体が巻き取られたコードのように湖へと引きずられる。


「勝った………この冒険者との綱引きに勝利した、お前はそう思ったな?」

「今なんて?」


 勝利を確信し油断する。

 毒竜よ、お前は勝負において絶対にやってはならない愚かしい行動を取った。


「その代償は敗北で支払うんだなっ!!クローネさん、全力で竿を引いてください!!!!!」

「承知しましたっ!!!!!!!!!」


 足を根のように地面に深々と突き刺し、竿が折れんばかりの力で湖の主………じゃなかった、毒竜を引っ張り上げる!!


「これは………思いっきり引っ張られてます!!足場がグズグズで力が入りません!!それに引っ張られて体勢が崩れてる状態で力なんて入るわけないじゃないですか!!!」


 あれ、上手くいくはずだったのに、絶対おかしいって!!昔テレビでやってるの見たことがあるような気がしたのに!!!

 こうなったら………ライトニング!!


 必至に力を込めるクローネさんに聞こえない程度の小声で湖中央に向かって唱えると、湖面に電流が走り、数百メートル近く離れているにも関わらず竿がぴりつく。


「力が………弱まりました」

「作戦成功ですね、綱引き作戦成功です!!やった甲斐がありましたね!!!湖から引きずり出しましょう!!」


 リールを巻き竿をしならせると、湖面にうつる影がより一層大きくなっていく。


「一時的にショック状態になっていると思いますが、地上に引きずり出した瞬間攻撃を仕掛けてくる可能性もあります。毒竜が姿を見せたらクローネさんは下がってください」

「ショック状態?………分かりませんが、分かりました。イツキ様こそお渡しした指輪の効能を過信せず、距離を取ってください。抗毒薬は何種類か持ち合わせていますが、毒竜の持つ猛毒を考えれば気休めにもなりません。近くに集落すらないこの場所で毒に侵されれば、必ず死にます」


 オレは前を見据えながら頷くと、遂に毒竜を湖から引き上げる。


「これがカシャフの毒竜………」


 クローネは退避することも忘れ、地上に姿を現した毒竜の異形を見上げた。

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