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いもうと無双は異世界転生と共に〜38才こどおじの異世界英雄譚〜  作者: 蒼い月
あの日の記憶

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裏切り者

「多くの種族が争うなかで、人と同じ姿を持った、人とは異なる種族が存在しました。それが、人狼とシェイプシフターです」

「シェイプシフター?」


 どこかで聞いたことがあるような………。


「自由自在に姿を変えられる種族です。彼らはその能力のせいで人狼など及びもつかないほどの………この話は本筋からずれるので今は止めておきましょう。人狼とシェイプシフターの一番の特徴は、人と同じ姿を持つ事です。我々人狼はよく満月に照らされれば自我を失い本来の姿を見せるなどと言われていますが、それは真っ赤な嘘です。我々は自らの姿を完全に制御下においています。人狼の姿をなりたいと思えばなることが出来、人の姿でありたいと思えば数十年でも、その気になれば一生であってもそのままでいられます。満月の世に本性を表すなどというのは、俗説に過ぎないのです………丸々とした月を見ると少々興奮はしますが」

「やっぱり興奮するんですか!?」

「冗談です」


 オレがツッコむとクローネさんは真顔で即答する。

 あれっ、オレからかわれてる??


「申し訳ありません。イツキさんを見ると、ついついからかいたくなってしまうんです。これは本当です。冗談はさておき、この人でありながら人でないという特性は、戦時においては大きな脅威となりました。村と村で争うのであればいざ知らず、国を超えて人が集まり、神王のために一致団結し戦っていたのです。肌の色も、瞳の色も、慣習も、言葉すらも異なる人々のなかで、一度人間社会にはいりこんだ人狼を区別することは最早不可能でした」


 確かにオレも事前の情報がなければクローネさんが人狼であることなんて想像すらしなかっただろう。耳や尻尾、また身体つきや顔に大きな特徴が出る亜人と違い、人狼が人間社会に溶け込むことは極めて容易だろうな。


「人狼が全面的に敵であれば話は早かったのかもしれません。もしくは信頼できる唯一無二の味方であっても。しかし、人狼は他の多くの亜人と同じく、部族単位で関係性の近い陣営にはいりました。そのなかで始祖についていた悪魔が囁いたのです。『人に成りすまし、神王から宝剣を盗み出せ』と。人狼は誇り高い種族です。自らの血肉を以て相手を打ち破るのであればともかく、相手の信頼を裏切り、騙すような行動を良しとするものはいませんでした。しかし、次第に戦況が傾き、始祖の敗勢が濃くなると、それを挽回するため相手陣営に潜り込む人狼が現れました。神王の陣営において、人は絶対的に信頼されていました。それはこの地上において最も繁栄している人を厚遇することで、自陣の戦力を高めたいと考える神王の策だったのかもしれません。しかし、例えそういう事情があったとしても、人は神王の居室にまで自由に出入りすることが出来たのです。そして、事件は起きました。人狼は人に成りすまし、神王の居室に侵入し、宝剣を奪い始祖に捧げたのです。このことが原因となり、始祖と神王の力関係は揺り戻され、多くの種が絶滅するほどの激しい戦いが再燃したと言います。裏切り者である人狼は神王の陣営で隔離され、迫害され、時に人同士の間で人狼狩りが起こったとも言われています」


 クローネの言葉が途切れる、唇を噛みしめる音がした。

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