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いもうと無双は異世界転生と共に〜38才こどおじの異世界英雄譚〜  作者: 蒼い月
あの日の記憶

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投獄

「よろしい、では今この場で裁きを言い渡す。イツキ・キーファーライスフェルトよ、その方の行動に叛意がないことは認めよう。だが、一方で証拠もなく王族の名誉を汚す発言をしたこと、己の過ちを認めず妄言により人心を惑わす罪は看過しうるものではない。王命により死罪を命ずる、異論はあるか」


「お父様っ!!」


「黙れ、リーゼ!!国王陛下は既に王命を下された。ケルキヤ王国にてこの決定を覆すことが出来る者は誰もいない」


 王の言葉がぼんやりを脳内に反響する。

 異論はない。オレは伝えるべき事を伝え、王は国法に則り決断を下した。そこには、役割の違いこそあれ、間違いはない。


「お前達、この反逆者を牢にぶち込め!!フハハハハハッ、次お前の顔を見る時は絞首台に括られる時になるだろうな。いや、処刑に間に合わず、既に首が切り落とされ国賊として晒されているかもな!!次期国王たるこのネロを侮辱した罪を死の瞬間まで悔いることだ!!」


 衛兵が包囲の輪を縮める。


「待て。まだ裁きは終わってはいない」


「何を仰っているのです、父上」


「ただ凡庸なる死を与えるのは王族の名誉に泥を塗る行為に比し、あまりに軽い。国は支配する者と、支配される者の秩序によってのみ成り立つ。その均衡を破らんとする行為は、国を滅ぼさんとすることに等しい」


「仰せごもっともです。故にこの者には死罪こそ相応しいのです」


「それでは生ぬるい。その方には国家のためにその身を犠牲にすることで、罪を贖わせることとしよう。王都より東に5日ほど歩を進めた先に、カシャフと呼ばれる毒に侵された湖沼がある。そこはカシャフの毒竜と呼ばれる水棲の竜が支配する死に覆われた世界。イツキよ、この毒竜と戦うことを以て罪に対する罰とする。討伐に成功すれば、死を乗り越えた者として罪を許そう。討伐に失敗し死したとしても、親族は罪に問うまい。ネロよ、カシャフはそなたの所領にも隣接しておる、毒竜討伐の利は大きい。それで良いな」


「フハハハハハッ!!父上もお人が悪い、かの竜燐の騎士ならばいざ知らず、たかだか銀だか銅だかといった冒険者がカシャフの毒竜を倒せるはずもありますまい。私は構いません、毒竜に新鮮な餌を与え肥え太らせるのは気に入りませんが、このような精神異常者を口にすれば、食あたりでしばらくは大人しくなるかもしれません。リーゼ、元よりお前が異論を挟むような話ではないが、格別な慈悲をもって確認してやろう。父上の御判断に異論はないな」


「………国王陛下の御随意に」


「フハハハハハッ!!斬新な処刑方法、感謝いたします父上。では、またリーゼがあれこれと埒もない不平を述べ、父上の御聖断が覆されては事です。我々はこれにて失礼いたします。いくぞ、リーゼ」


 ネロの言葉にリーゼロッテが国王に一礼し、クローネを伴って謁見の間を後にする。オレの手足には分厚い鉄製の錠がはめられ、衛兵により牢に連れられる。

 無機質な鋼鉄の枷はたしかに身体の自由を奪ったが、心はどこまでも穏やかだった。

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