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いもうと無双は異世界転生と共に〜38才こどおじの異世界英雄譚〜  作者: 蒼い月
あの日の記憶

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仮面の下の本性

 いくつかの疑問は、マツダという転生者が自らの出自を偽るため、ルーフェという男と入れ替わったのだとしたら合点がいく。わざわざ高名な騎兵隊長をターゲットに選んだ理由は分からないが、地位の高さや名声に惹かれたというところか。


 ミスリル級冒険者とはいっても、長い間現場からは離れていたのであれば、冒険者の顔見知りは少ないだろう。騎兵隊長とはいっても、一貴族の私兵という立場を考えれば、他の地方に移動してしまえば正体がバレる可能性も低い。


 そして何より、転生者がこの世界で名のある人間と入れ替わっていると考えるような奴は存在しない。自らの出自を隠し、この世界に紛れるための絶好の隠れ蓑というわけか。


「なかなかに頭が回る………悪辣と言えるほどにな」

「店長のことですか?」

「ふんっ、気にするなと言っているだろう」


 そうなると、ルーフェ本人は最早この世にいないことになるだろう。この女は転生者を魔法詠唱者だと言っていたが、相手に催眠をかけ行動を操った可能性も考えられる。姿形は俺のように魔法で誤魔化しているといったところか。竜のねぐらの調査依頼を請け負ったのは、この世界における腕試しが目的だろうな。魔法の試し打ちをしたところ、想像以上の威力で大森林の邪竜を跡形もなく消し飛ばしてしまったのだろう。


 報告書によると、ルーフェは竜のねぐらの探索を異国の冒険者とともに受けている。男女四人、兄妹で旅をしているのか。どうやら込み入った事情がありそうだな………なんだ、仰々しく『疾風』などという異名までつけているのか?制度が出来た当初は物珍しさに登録していた冒険者も多かったが、いまだに自分で異名を決めるバカが居たとはな、無駄にセンチな気持ちになって損をした。


 しかし、異国の人間と組んだのは自らの異質さを勘づかれないための行動だと推測できる。転生者はこの世界の基本的なルールを学ぶため、最低限言葉が通じることがわかると、誰かと行動を共にしたがる。この国に来たばかりの冒険者、それも兄妹の冒険者との旅ともなれば危険性も少なく、下手に事情を探られることなく知識を得るのに都合が良いというところだろう。竜に挑むにあたって、前衛職の囮として使い潰す目的もあったのかもしれんな。


 こうして転生者であるマツダはルーフェという新しい名前をこの世界で得たというわけか。


 竜の存在を地形ごと吹き飛ばすほどの魔力、目的のためなら躊躇しない精神性………どうやら、もう一人の転生者は、このバカの記憶にあるような温和で大人しい人間ではないようだ。

 生まれ変わった己の力に溺れ我を見失っているのか、異世界に来たことで仮面を脱ぎ捨て本性を見せたのか。いずれにせよ、慎重に探る必要がありそうだ。


 そうなると、俺が取るべき行動はひとつ。


「どうしたんですか、ストラダーレさん、難しい顔して。ひょっとしてお腹空いてるのに、私が独り占めしちゃってるの怒ってたりします?あの、この料理はまだ半分くらいしか食べてないので、よければ半分どうぞ」


「要らん!!だいたい喰いさしのものを人に勧めるな!!それに勧めるならせめて全部差し出せ!!」


「あうぅ、怒らないでください、全部食べていいですから~」


「はぁ、相変わらずお前といると締まらんな。まあいい、飯が終わったらすぐに出るぞ、そのつもりで用意しろ」


「どこへ行くんですか?」


「お前の探し人のことを知っている人間の場所だ。若い女を3人も連れた異国の冒険者…嫌でも記憶に残るだろう。適当に冒険者ギルドの酒場で聞いて回れば、簡単に後を追える」


「店長の行方を知っている人が近くにいるんですね………分かりました、いま新しく頼んだ料理を食べ終わったらすぐ出発しましょう!!」


 女はそう言いつつ、一度俺に差し出した皿を引き戻した。

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