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いもうと無双は異世界転生と共に〜38才こどおじの異世界英雄譚〜  作者: 蒼い月
あの日の記憶

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ある推測

「それで、店長はどこにいるんですか?」

「だから今いる場所は分からんと言っただろう」


 間の抜けた質問に答えると、女は『そうでした、へへっ』などと苦笑いを浮かべつつ、照れ隠しのためかテーブルに並べられた食事に片っ端から手を付けた………いや、こいつの場合はただ食い意地が張っているだけだな。


 しかし、こいつの言っている店長『マツダ』という男は意外とやり手かもしれんな。竜のねぐらについて探ってみたところ、散見された不自然な事実。

 ひとつは竜のねぐらを調査して欲しいという謎の依頼だ。


 大森林に住む亜人の少女からの依頼だというが、タイミングが良すぎる。数十年のも間、眠っていると言われる実在すら怪しい幻の竜を、今さら調べるなどというハチの巣に石を投げつけるに等しい危険行為を森に住む者が好き好んで依頼するとは考えにくい。

 依頼者による自作自演か、何者かが亜人がそうするように仕向けたと考えるのが自然だろう。


 ならば、なんのためにそのような依頼をしたのか。

 それを解き明かすヒントは、この報告書にありそうだ。

 俺は真新しい一枚の羊皮紙を開く。


 通常、冒険者の依頼はギルドへの報告をもって完結する。文字を書けない冒険者が多いこと、また客観的な視点において要点をまとめあげる必要性から、報告書はギルドの手により仕上げられるのが通例となっているが、その過程で依頼を発注したギルドに保管するもの、王都にある本部に送るもの、そしてその写しと3部の報告書が作成される。


 ギルドの元帳に綴られる2通の報告書、特に王都のギルドに送られるものは厳重に保管され、ギルドに勤めるものでも容易には見ることが出来ないと言われているが、写しについては元から立ち位置が曖昧なこともあり、ギルドの受付嬢などの小遣い稼ぎに利用されることも多い。

 つまり、情報を必要とするものに小銭を対価として貸し出すのだ。


 とんでもない職業倫理ではあるが、一部の秘匿性の高い依頼を除き、半ば公然と行われているため、俺もこうしてギルド併設の酒場で堂々と報告書の写しを広げることが出来るわけだ………強欲な受付嬢により手痛い出費を強いられる事とはなったが。


 俺は改めて報告書に目を落とす。

 報告書の記載者は『ルーフェ・グルーク・ラング』。

 比類ない富によりケルキヤ王国において隠然たる力を持つ辺境の王『グレンツァ・アウフシュテルン・インゼル侯爵』の元で騎兵隊長を務めていた元ミスリル冒険者。


 インゼル侯爵はその有り余る富を背景に破格の報酬を以て精強な私兵を集めていると聞く。それをまとめあげる騎兵隊長ともなれば、その地位や名誉、富たるや一介の冒険者風情と比べるべくもないだろう。

 そんな男がなぜ輝かしい地位を捨て、冒険者に戻ったのか。

 そして、なぜ実入りの噂話の調査などという退屈な依頼を請け負ったのか。


「入れ替わったか」


「えっ、何か言いましたか?」


「気にするな、独り言だ」 

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