娼館にて
「流石です、兄様、略して『さすおに』です!!」
「あっ、うん、まあ、こんなものだな」
ロロの協力もあり、王女付の侍女であるクローネとの約束を取り付けたオレは、アツコの導きで王都の外れにある高級娼館の一室にいた。
………いや、なんで娼館!?
それに、どうしてアツコ達もサラッと王都にはいれてるんだ??
「お疲れになりましたよね?汗をお流ししますので、浴場にまいりましょう。そのあとはゆっくりと休憩いたしましょう。いいですよね、兄様」
「えっ、よ、浴場に、一緒に!?あ、いや、そのだな………大丈夫だ、明日以降の策を練らなければいけないからな。一人でゆっくりと風呂につかりながら、落ち着いて思考をまとめたいんだ、すまないな」
「そうですか、残念です」
アツコが口を尖らせる。
危ない、あやうく『はい、喜んで!!』と二つ返事で受ける所だった。
というか、ここだと邪念のせいで『休憩』の二文字を字義通りに受け止めることが出来ない!!限りなくそういった経験がゼロに近いだけに余計に!!
「あはは、あと少しだったね、残念。も~、お兄ちゃん、私達が気になってるだけなら、遠慮せずにこの前の続きしてよかったのに。ねえ、ナナセお姉ちゃん」
「う、うん。兄さん、結局私はまだ一度も出来ていませんし、後学のためにも見学させて貰えれば嬉しいです」
「わざわざ勉強するような事じゃないでしょ!!」
「え~、ミカヅキちゃんは勉強しなくても、もう実地で知ってるってこと?意外~」
サヤが煽るとミカヅキが般若のような顔で睨み返す。
「と、とにかく、今日はワカナのおかげもあって、無事帰ってこれた。ありがとう」
「ね~、いっちゃん、いきなり痴漢っぽいことしだすからビックリしちゃったよ。妙に手慣れてたし。ひょっとして普段から練習してるの?」
「そんなわけあるか!!」
「どうだか。いつもは鈍くさい癖に、今回は驚くほど手際よかった。まっ、そのおかげでクエストをクリア出来たわけだし、結果オーライだけど」
ミカヅキの言葉に部屋が安堵に包まれる。
「しかし、皆はどうしてここに?」
オレはずっと温めていた質問を口にする。
「どうしても何も、あんな奇行ばっかのバカ兄を一文無しの状態で王都に一人にしておいたら、何をしでかすか分からないでしょ。保護するために来てあげたんだから、感謝しなさい」
「ん?奇行ばっかって、別に今日のオレの活躍を見てたわけじゃないだろ?」
オレが疑問を口にすると、妹達が一様に渋い顔をする。
えっ、なんか変なこと言っちゃったか?
「それは………普段の間の抜けた行動から推測すれば分かるでしょ!?それとも何、一人でなんとかなったとでも言うわけ??今からココを叩きだしてもいいんだけど!!」
「もう、ミカヅキのちゃん自分の手柄みたいに言って~、ここの店主を説得したのはアツコお姉ちゃんだし、交渉したのは私だよ?」
アツコとサヤによる『説得』に『交渉』か。
非常に興味深くはあるが、触らぬ神に祟りなしだ。詳細はあえて聞かない事にしよう。




