脳筋隕石
「こちらイツキ、現在王都内裏通りを王宮に向かい移動中、どうぞ」
「しつこい!!ただ歩いてるだけで何回かけるつもり!?状況は分かったから、さっさと王宮に入ってロロって子見つけてきなさい!!」
メッセージが途切れ、再び静寂だけが薄暗い裏路地を包み込む。いや、本当について来てくれないんだね、みんな。
王都についたオレ達は正門から離れた城壁から内部への潜入を試みるべく、ミカヅキの魔法により結界の有無を確認した。ミカヅキによると、王都には上空を含めすっぽりと覆うような半球形の結界と城壁を保護するように設置された垂直の結界の2重防壁により守られているらしく、迂闊に侵入すれば防御システムが作動し、即座に兵がかけつける仕組みになっているだろうとの事だった。流石王都ともなると警戒網も厳重なものだ。
当初は『フライ』で空から侵入する案や『ディメンション・ドア』で壁を抜ける計画を立てていたが、両アイデアともに結界を突破できるかどうかの確証は持てず、また無事内部に入れたとしても侵入者として存在を気取られる危険性が高いのでは、という懸念が拭いきれない。
もちろん、侵入したあとすぐに移動すれば捕まることはないだろうが、国王との対話において魔法で強引に侵入してきた無法者だという印象を持たれるのは不味い。
「うんっ、これもう実質詰みだな、仕方ないからまた次の機会にでも………」
オレはそう言ってさりげなく逃亡を試みたが、解決策はすぐに示された。
「要するに結界を破ったうえで、私達が侵入したってばれなければいいんでしょ?」
そう、あの時のミカヅキの目は確かに座っていた。もう目が正座どころか、胡坐をかいていた。オレはそれに気付くべきだった。
次の瞬間、空に杖がかかげられ、雲の切れ目から何かが見えた。
「メテオストライク!?」
「これで結界を破る、隕石なら日常的に降ってくるものだし、魔法だってバレないでしょ!!衝撃で結界が消滅したタイミングを見計らって、ディメンション・ドアで中に入って!!」
「いや、日常的に隕石降ってくるってどんな修羅の国なんだよ!!それに、これじゃ王都ごと消滅しかねないだろ!!」
「威力は抑えてあるから大丈夫………たぶん」
「たぶん!?」
「うじうじしてないで、準備しなさい!!ぶつかる!!」
家ほどもある巨大な隕石が2枚の防壁を貫くように正門上空から鋭角に飛来し、結界に衝突した。魔力の障壁は他国にも聞こえんばかりの轟音とともに砕け散った。その刹那、消え去る隕石、こだまする王都民の悲鳴………いや、歓声のほうが大きかったかな。
「うわ~、想像を超える超脳筋解決法だね、ミカヅキちゃんこっちの世界きてからIQにデバフかかってない?」
「そう?私は好きよ、こういう派手なの。兄様が切り拓く新時代の幕開けに相応しい演出だわ」
「威力を軽減させたうえに、転移魔法で召喚したメテオを別次元に飛ばしたんだ。流石ミカちゃん、器用だね」
「た~まや~」
妹達は呑気に隕石見物を楽しんでいたな………相変わらず肝が太いというか、一切動じない胆力が羨ましい。




