勝敗
「オレが寝ている間になにが起こったか教えてくれないか」
オレの問いに妹達はめいめいに答える。
ワカナの誘拐の件、ミカヅキとサヤに起こった出来事、そしてアツコとナナセが怪しげな地下祭壇でオレを発見した時のこと。あまりの情報量に脳内がパンクしそうだ。
しかし、何よりも先にまずこれだけはハッキリさせておかなければならない。
「ミカヅキ、聞いてくれ」
そうだ、オレはミカヅキに確認しなければならない。
「なんなの、いきなり真面目な顔して」
「結局二人ともワカナは助けられなかったわけだし、今回は引き分けだな。まあ、ミカヅキが偶然その研究所のような施設を発見したのと違い、オレは推理をもとにもっと重要っぽい何かを見つけたわけだから、実質オレの勝ちという見方も出来るが、ワカナを救出できなかったのは確かだからな。うん、引き分けでいいぞ、実質オレの勝ちという考え方もあるがな」
次の瞬間、ミカヅキの憤怒の表情が網膜に写り、ゴスンという衝撃が脳天にはしったと同時に映像がブラックアウトした。
「グガァ!!」
痛っ!!!
杖の、杖の角の硬い部分が、硬い部分がつむじに刺さって、あっ、血が滲んでる。
暴力反対!!
「真剣な表情で何言い出すかと思えば、こっちの気もしらないで!!でも、いつも通りの頭の悪さで安心した。少なくとも何かに精神を乗っ取られたってことはなさそう」
そう言い深々とため息をついたミカヅキは頬を緩めた。
「みんな、オレが眠っている間心配をかけた、すまない。ありがとう」
「謝るか礼を言うかどっちかにしなさい。それで、これからどうするの」
「まず、ワカナの誘拐の件がなんだったのか気になるな。ワカナ以外にも大量の子ども達が、それも女の子を中心に誘拐されていたんだろ?同化のための実験体として集められたにしては量が多すぎるし、人目につくことも恐れず各地で一斉に実行する意図がわからない。これじゃ、まるで目立つ事が目的だといわんばかりだ。ワカナのおかげで一緒にいた少女達は解放できたとはいっても、なにか大きな目的があってもおかしくない」
「暇だったからギルドとか酒場とか、あとちょっと人の家に勝手にお邪魔して情報収集したんだけど、冒険者ギルドが上位の冒険者を集めてコプト教団っていう始祖を信奉する邪教討伐に乗り出したらしいから、それと関係があるかもね。噂によると竜燐級冒険者が返り討ちにあったとか。どこまで本当かはわからないけど」
サヤが世間話をするかのように際どい事を言う。
サラッと犯罪行為の自白があった気がするが、そこは目を瞑るとして、怪しげな宗教組織が絡んでいるのであれば生贄を集めて儀式魔法を発動させようとした可能性が高い。実際ミッドガルドでは様々な敵勢力が儀式魔法により強力なモンスターを召喚したため、それを討伐するというストーリーのクエストが多かったし、この世界とミッドガルドの類似性を考慮すると同様の事件がいつ起こってもおかしくはないだろう。




